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月刊コラム

2023年1月号

2023年1月号

平板な人間観を前提とする社会の限界
利己的行動が人間の本性なのか!?

新年あけましておめでとうございます。

年末年始『ホモ・エコノミクス―「利己的人間」の思想史』(重田園江・明治大学政治経済学部教授)を読みました。
遠い昔、メンガー、ジェヴォンズ、ワルラスの3人の経済学者の名前とともに、「限界革命」の経済学史上の意義を学んだことを思い出しました。

本書は、「自己の利益を最大化することを指針とする人間」=「ホモ・エコノミクス」という、近代経済学が前提とする人間観に対する率直な疑問をていねいな論考で表明したものです。
「人間はホモ・エコノミクスである」という理論上の仮定が、「人間は事実としてホモ・エコノミクスだ」へ、さらに「人間はホモ・エコノミクスとしてふるまうべきだ」という規範へと地滑り的に拡大適用されていった、と主張しています。

新たな階級である市民の自由な経済活動を正当化する理論的支柱として、18世紀までは卑しむべき存在とされていた利己的人間、金儲け至上主義が、人間の本性としてまかり通るようになりました。
その根拠は、経済学の「科学」化です。
科学になろうという強い意欲を持った経済学が物理学の数学を導入したことによって、抽象化・単純化した理論的前提そのものが所与のものとして普遍化したのです。

私たちは、日常的に利他的な人間の行動を目にしています。
そうした当然のことを、「科学」という装いによってあり得ないことにしてしまったという反省や内省を行うときではないでしょうか。
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの経済関係を断ち切れないドイツに対して、「あなた方の関心は経済ばかりだ」というスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの言葉を引用して批判しました。

が経済学の定義がアルフレッド・マーシャルの言うように「幸福であることを達成するために用いられる物質的な必要条件に密接に関連する個人的および社会的行動の研究」だとすれば、これからの私たちの進むべき道標の一つとなってくれるはずです。


                                  株式会社ウエルビー
                                  代表取締役 青木正人

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