ポピュリズムの波にのまれるな!?(2025年5月)

ポピュリズムの波にのまれるな!?
消費税減税のもたらすものは

先月号のコラムで「永田町では、与野党挙げて消費税の減税コールが高まる」と述べましたが、少し風向きが変わったような印象を受けます。
日本でもポピュリズムが勢いを得るのかと思っていましたが、そうではないようです。

消費税減税を巡る各政党の対応

経済学者47人を対象とした「エコノミクスパネル」(日本経済新聞社・日本経済研究センター)の調査では、一時的な消費税減税の是非について聞いたところ、財政状況が悪化することなどを理由に「全くそう思わない」(28%)「そう思わない」(57%)の割合が計85%に上っています。

一時的な消費税減税を行うのは適切だと回答した経済学者 出典:5月24日付日本経済新聞

こうした判断は、なにもエコノミストだけではありません。
日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査(5/23〜25)では、消費税減税への考えを聞いたところ、「社会保障の財源を確保するために税率を維持するべきだ」は55%、「赤字国債を発行してでも税率を下げるべきだ」が38%となっています。
8%の軽減税率を適用する「食料品にかかる税率を一時的にゼロにすべきだ」との主張への賛否についても、反対が48%で、わずかではありますが賛成の45%を上回っています。
国民の多数は、目先の対策より将来の安心を手に入れたいと考えており、財源を示さず世論受けを狙って減税を訴えるだけでは支持を得ることは難しいといえるでしょう。

消費税を維持すべきかどうかの回答 出典:5月27日付日本経済新聞

そうした流れの中で、石破茂首相は7月参院選の公約に消費税減税を盛り込まない方針を決めました。
消費税は労働力の減少や高齢化の進行でを見据え、社会保障と税の一体改革のもと1989年に導入されたものです。
人口減少社会では、誰もが負担する消費税は長期に安定した財源なのです。

消費税の使途をみれば一目瞭然ですが、わが国の社会保障のサステナビリティを確保するためには欠かすことができません。
消費税が削減されれば、介護報酬は抑制、削減され、介護サービスは量・質ともに縮小せざるを得ません。
保険者の負担は増し、課題視されている地域格差はさらに拡大するでしょう。
消費税を確保・充実させる施策は、高齢者に限った手当ではなく、全世代が一様に恩恵を受けるセーフティーネットであり、チャレンジングな生き方を支えてくれるものでもあります。

消費税の使途 出典:財務省の資料

また先ごろ、自民、公明、立憲民主は、3党協議を経て、厚生年金の積立金を活用した基礎年金の給付水準引き上げ案に合意もしています。
これも、ポピュリズムとは一線を画した国民の生活を真に下支えする大切な政治決断です。
こうした正論が支持されるわが国には、未来への展望が開けてくる可能性が大きく残されていると言えるでしょう。

株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人

1955年富山県生まれ。

1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。

大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。

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