日本の介護サービスを国際規格に!(2024年5月)

日本の介護サービスを国際規格に!
尊敬される国家として外交・安全保障上のメリットも

先月、「介護の国際規格、25年にも創設 日本基準の反映めざす」という見出しで、国際標準化機構(ISO)が、2025年にも介護サービスの質や安全性に関する基準をつくるという報道がありました(「日本経済新聞」4月8日付朝刊)。
同紙によれば、政府は高齢者向けの食事提供や事業者の経営情報公開といった日本基準の反映をめざし、高齢者が食べられる量や嚥下機能を考慮した食事の提供、栄養士が求める栄養を摂取できる献立の作成など多数の要求事項を出しているようです。

出典:日本経済団体連合会「グローバルな市場創出に向けた国際標準戦略のあり方に関する提言」2024年2月20日

また、国際規格に日本の提案が採用されると、国内で介護サービスを展開する事業者の海外進出がしやすくなるというメリットがあるとしています。

介護サービスの質に関する基準づくりについては、これまでもわが国ではさまざまな試みが行われています。
「介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」や「老人保健健康増進等事業」において、長年、調査研究が続けられてきました。
また、近年の「科学的介護情報システム」(LIFE)による科学的介護の推進事業も、介護サービスの質の向上を目的としたものです。

LIFEを活用した取組イメージ 出典:厚生労働省「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き-2024年度版」

医療における質の評価については、アベティス・ドナベディアン(Avedis Donabedian)が提唱した、ストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(結果)の3要素によるアプローチが一般に用いられていますが、プロセスの標準化がより困難な介護分野においては、評価の基準は定まってはいません。
LIFEが、創設以来3年を経ても難渋していることを見ても明らかです。

2016年から取組みが始まった「アジア健康構想」(AHWIN: Asia Health and Wellbeing Initiative)においても、日本的介護の機能を分析・整理し、「栄養・水分確保」「口腔機能および摂食嚥下機能の維持」「排泄機能の維持」「本人の可能な範囲での活動量の確保(活動・参加)」「認知機能の低下に対する把握と適切な対応(認知機能)」を、自立支援に資する介護の5つの要素として評価軸に据えています。

自立支援に資する介護の5つの要素 出典:内閣官房健康・医療戦略室「日本における介護について」2022年

また、アジア健康構想においては「地域包括ケアシステムの構築や日本の民間事業者等の進出促進等の相互互恵的なアプローチによる取組を進める」ことが目的として掲げられています。

介護の国際規格に日本の提案が採用されるということは、たいへん大きな意義があります。
そのためには、これまでバラバラに取り組まれた感がある介護の基準づくりを統合・包括し、オールジャパンで推進していくことが必要だと考えます。

高齢化のトップランナーとして蓄積してきた知見を世界に発信し、わが国が成熟した先導的な国家としての役割を担うことができれば、尊敬される国家という地位がもたらされ、地政学を越えた新しい外交・安全保障上のメリットを生み出すことになるはずです。

株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人

1955年富山県生まれ。

1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。

大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。

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