通所介護事業所でのオンライン診療実現を(2024年7月)

通所介護事業所でのオンライン診療実現を
郵便局での実証実験に高評価

政府の規制改革実施計画では、健康・医療・介護分野のデジタルヘルスの推進事項として、身近な場所でのオンライン診療の更なる活用・普及が真っ先に掲げられています。
すでに居宅と同様に、療養生活を営む場所として、患者が長時間にわたり滞在する場合にはオンライン診療を受診できることを、厚生労働省も明確化しています。

そうした動きの中、総務省を中心に郵便局でオンライン診療を提供することが検討されています。
「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」のメニューの一つで、全国24,000局の郵便局ネットワークを活用し、デジタル技術による解決事例のモデルケースを創出することを目的に実証実験が行われています。
昨年11月には石川県七尾市で、「へき地における医療に対するアクセシビリティの確保」をテーマに、郵便局の空きスペースを活用したオンライン診療の実証事業を全国で初めて実施しました。
実験が行われたのは、同市東部の海沿いの集落にある、医師がいない「無医地区」の南大呑(みなみおおのみ)郵便局です。

郵便局内の空きスペースに、音声が遮断でき、プライバシーが保てる個室ブースや専用モニターを設置し、協力する市内の医療機関と患者をネット回線でつなぎました。
対象の患者は11人で、すでに同じ医療機関に通っている糖尿病や高血圧など長期的に観察が必要な人です。

診療は
➀対面診療を行った際に医師から説明を受けた上で、次回診療をオンライン診療として予約
②予約当日に郵便局へ向かい、郵便局員のサポートを受けながらネットに接続し、オンライン診療および服薬指導を受ける
③郵便局の窓口で料金を支払う
④日本郵便のレターパックで配送された処方薬を翌日または翌々日に受け取る
というの流れで行われます。

実証実験の概要 出典:令和5年度「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」報告書(総務省)

郵便局社員には、主に患者の確認、実施スペースへの誘導・衛生管理、機器操作のサポート、支払処理、患者アンケート回答依頼を担ってもらい、実証終了後にはヒアリングも行われました。
実証実験を通して明らかになった患者のメリットには、対面診療では、片道30分程度かかっていた通院が、郵便局へは5~10分以内で到着できることで、「通院時間の節約」「交通費の節約」「体力的な通院負担の軽減」などが挙げられました。
また、患者の半数近くは、スマートフォンを所持していないか、通話でしか使っていないため、患者自身でオンライン診療を受けることが難しい状況でしたが、今回の実証実験では、住民にとって顔なじみの郵便局員が患者をサポートすることで、担当した医師も「安心して患者を任せることができる」と語っています。

一方、課題もあります、
費用面では、郵便局でオンライン診療を受ける場合には、一般的な診療や医薬品にかかる代金に加えて、郵便局での窓口支払いに対する手数料や医薬品の宅配に使用するレターパック代の合計1,000円程度がかかります。
今回は手数料などは取っていませんが、実用化に向けて、誰が負担するのかが問題となります。
運用面では、予約枠の設定、予約情報の共有、診療・服薬指導の順番等の一連の診療に関するフローは現場で運用を行うため、医療機関・薬局・システム提供事業者が情報を共有し、随時連絡を取り合える体制を構築しておくことが日知ようになります。

七尾市では現状、1月に発生した能登半島地震における復興作業が最優先課題となっており、この事業の実装化に振り向ける余裕はないということですが、こうした動きは他の地域でもはじまっており、山口県周南市は、無医地区の郵便局に診察室を定期的に開設して診療所の医師と結ぶオンライン診療を7月にはじめると発表しています。

厚生労働省は本年1月、へき地などに限らず都市部を含め、必要性があると認められた場合には、特例的に「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」の開設を可能とする通知を発出しています。
実証実験の結果を考慮すると、まだ実現していない通所介護事業所でのオンライン診療も、利用者、患者にとって大きなメリットがあるのではないかと思われます。
郵便局に比べても通所事業所は、設備の面やサポートする人員の面で、勝るとも劣らないのではないでしょうか。
ぜひ、医師会、行政との連携のもと、実現に向けた取り組みを期待したいと思います。

株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人

1955年富山県生まれ。

1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。

大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。

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