就業者は過去最多でも深刻な人材不足(2025年2月)

就業者は過去最多でも深刻な人材不足
事業者と求職者のミスマッチを解消するには

総務省が先月末公表した2024年の就業者数(15歳以上の人のうち、仕事を持って働いている人や一時的に休職している人)は6781万人と、前年から34万人増え過去最多となりました。
就業者数は景気回復などを反映し、2013年以降増加してきましたが、新型コロナウイルスの影響で2020年、前年比で40万人減少。その後は緩やかに回復が続き、2024年は過去最高だった2019年の水準を上回りました。
15歳以上の人口に占める就業者の割合を示す就業率も、2024年は前年から0.5ポイント拡大し61.7%となっています。

就業者の推移 出典:「日本経済新聞」2月1日付朝刊

要因は、女性やシニア層の就労が広がりで、女性の就業者は前年比で31万人多い3082万人で最多。
就業率は、男性は直近10年間で1.9ポイントの上昇にとどまっていますが、女性は6.6ポイント上昇しています。
高齢者の就業率も上昇傾向にあり、65歳以上は前年比で0.5ポイント高い25.7%でした。

にもかかわらず、人手不足は解消するどころかますますが厳さを増すばかり、求人と求職者のミスマッチが起きています。
とりわけ介護、看護では、パンデミック以降求職者関心が減少し続けているため、パンデミック前の状況まではミスマッチが解消されず、むしろパンデミック前よりも高い水準でミスマッチが残る可能性があります。

下図はIndeed Japan株式会社が、雇用者と求職者のミスマッチの程度が大きい職種カテゴリについて、雇用者にとって競争が激しい上位職種カテゴリと求職者にとって競争が激しい上位職種カテゴリを示したものです。
2022年9月時点をみると、事務が7.9ポイントの差で平均より求職者にとって競争が激しいのに対して、雇用者にとっては介護が4.5ポイントの差で平均より競争が激しいという結果となっています。

ミスマッチの程度の大きい職種カテゴリ 出典:Indeed Japan株式会社

こうしたミスマッチの原因の一つに、雇用側と求職者側の希望がずれているという点が挙げられます。
2023年度「介護労働実態調査」によれば、介護従事者がその直前職を辞めた理由をみると、最多が「職場の人間関係に問題があったため」(34.3%)で、それに続くのが「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」(26.3%)、「収入が少なかったため」(16.6%)となっています。

若手人材を確保するため、30万円以上の初任給を提示する一般の大手企業が増えていますが、国が決めた報酬が原資の介護事業、それも中小企業レベルが大多数の業界では、給与だけに頼ることはできません。
同調査の介護職を選んだ理由についてをみても、「働きがいのある仕事だと思ったから」が 42.3% と最多で、「資格・技能が活かせるから」 29.5%、「人や社会の役に立ちたいから」27.4%と続いています。

職場の人間関係については、同調査でも改善傾向が見て取れるようですが、理念や方針をしっかり求職者に訴えるという点では改善の余地が大きいと考えられます。
単なる数合わせではなく、本当に自らの事業にふさわしい人材と巡り合うためには、愚直に理念、ビジョンを分かりやすく伝えていくことが欠かせないといえます。

株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人

1955年富山県生まれ。

1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。

大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。

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