2004年3月号

ウエルビーコラム 2004年3月号

介護・医療はセーフティーネット
年金偏重の社会保障政策を改めよ

介護保険法の改正が進められる現在 年金改革をはじめ 根幹となるわが国の社会保障制度そのものにかかわる議論も活発になっています。

3月9日付の日本経済新聞に 「年金よりも医療・福祉」 というタイトルで 千葉大学の広井良典氏の論文が掲載されました。

同氏は 「年金の問題が他から切り離され 医療や福祉を含めた 『社会保障の全体像』 をどうするか という議論が不足している」 と指摘したうえで 「年金重視から 『医療・福祉重点型』 の社会保障」への転換をはかるべきだ と主張しています。

その論拠は 「年金は要は老後の生活費の保障」 であるのに対して 医療や福祉の分野は 「リスクの予測が困難でかつその個人差が相当大きい」 という点にあります。

平たく言えば 「自分がいつどんな病気にかかり またその費用がどのくらいかかるのかの見通しが難しい」 ため 医療や福祉は手厚くすべきである。一方 現状の年金制度は 社会保障給付の5割以上を占めているにもかかわらず 「報酬比例」 によって 「いかなくともよいところに相当額が支給され本当に必要な人に十分な額がいっていない」 という欠陥がある ということです。

公的年金の意義は 「所得の再配分機能」 にあり 「基礎的な生活保障を平等に」 するのが国家の役割ではないでしょうか。公的年金に 高い所得の者に高い年金を支給する という機能をもたせる必要はないでしょう。公的年金は基礎年金だけにして それ以外の部分は 民間に任せてしまえばいいわけです。

国家財政の逼迫を理由に 本来 行政が整備すべき基礎的な基盤に対する財政支出までが 一様に削減されてはたまりません。

「公民の役割分担」「個人の自己責任と政府のセーフティーネット」 が 総論は賛成でも各論の改革には消極的 という守旧的な姿勢から脱していないのでは という疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

人としての尊厳を大切にしながら 悪平等を排した活力のある社会を目指したいのであれば 「失敗を恐れずチャレンジできる」 最低限の保障を国が整え 民間は知恵と工夫で創造的に事業を展開していく。

そういった社会であれば 日本は少子・高齢化を糧に 魅力ある国に変貌できるのではないでしょうか。

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