2004年11月号

ウエルビーコラム 2004年11月号

ケアマネジャーの「自立」と「独立」
プロフェッションの精神を自覚せよ

ケアマネジャーが「介護保険制度の要」であることは 周知の事実です。ケアマネジメントが本来の機能を果たすことは 利用者の自立・利用者利益を保障するために欠かせない要件です。したがって 今回のような抜本的な見直しの場合には ケアマネジメントについての大幅な見直し・変更は避けられません。

見直しの柱のひとつである「新・予防給付」の生まれた背景からケアマネジメントを考えてみましょう。 この新施策は つまるところ医療系サービスを活用して 要介護度の悪化を防ぎ 介護給付費の伸びを抑制しようというものです。

2003年の介護報酬改定は 医療系サービスをケアプランに反映させることを意図したものでしたが 案に相違して 訪問看護や訪問リハの伸びが見られませんでした。軽度者の要介護度が改善していないという日医総研の調査結果を根拠に 財政的な視点から給付を抑えようという国と医療側の思惑が一致した。そこで「新・予防給付」の登場  というのはうがち過ぎた見方でしょうか。

「新・予防給付」が必要な利用者に介護予防プランなどを作成する「介護予防マネジメント」の主体は 社会福祉士・保健師・「スーパーバイザー的ケアマネジャー」が配置された「地域包括支援センター」ということです。そのうち「介護予防マネジメント」を担うのは保健師とされています。

つまり「新・予防給付」に移行する軽度者は「一般の」ケアマネジャーがかかわらない(かかわれない)ため 介護給付を受ける要介護者は少なくなり 標準担当件数を引き下げても大丈夫。報酬単価を引き上げても 居宅介護支援に対する給付は増えない。 したがって ケアマネジャー団体等が要求している標準担当件数の引き下げと報酬単価アップが 今回の見直しで実現することになります。

このような経緯や背景を考えたとき 結果オーライと素直に歓迎すべきなのでしょうか。この改正が ケアマネジャーの専門性の向上や質の向上に結び付くのでしょうか。報酬のアップを訴えることを否定するものではありませんが  目先のニンジンだけに気をとられていると 本質的な問題がなおざりにされてしまう危険性に気がつかないものです。

ケアマネジャーには 介護「保険」支援専門員ではなく介護支援専門員という名称があらわしているように 利用者の生活をQOL向上の視点から総合的にサポートする大きな使命があります。介護保険の精神を体現するのではなく 現行の施策や制度に依存しているのではありませんか。行政に働きかけるのではなく おもねってはいませんか。

自らの活動範囲・事業範囲を制限されることを喜ぶ経営者や専門家は存在しません。自らの業務を「~ねばならない」義務としか捉えられないとすれば そのような人や事業は「独立」しているとはいえないのです。

まず ケアマネジャー自身が 精神的に自立し そこから経済的自立の道を確立していくという自覚を持つべきです。「独立」を目指すのであれば 自立したプロフェッションとしての哲学や志を明確にすべきでしょう。そこから 未来が見えてくるでしょう。そこから始まる活動や事業が プライドを生み出してくれるでしょう。

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