2005年12月号

ウエルビーコラム 2005年12月号

サービス提供責任者に何が必要か
介護福祉士・ヘルパー1級は役に立たない!?

先日 東京大学社会科学研究所の人材ビジネス研究寄付研究部門の「在宅介護ヘルパーの能力開発と人事管理に関する研究会」主催のシンポジウムに参加しました。同研究所では  訪問介護サービス業の人材マネジメントをテーマに研究を行っており 2004年11月に実施した  訪問介護事業所の登録型ヘルパー3,334人(回答1,450人)に対するアンケートの分析結果が発表されました。

研究の中心は「ヘルパーの職業能力は何によって高められるか」という点です。ヘルパーの職業能力の規定要因として「経験年数」「仕事内容(施設か在宅かなど)」「保有資格」「教育・研修」「サービス提供責任者の人事管理能力」などの項目をあげ 回帰分析しています。

その結果 ヘルパー1級あるいは介護福祉士資格の保有や福祉関係の大学や専門学校での勉強経験は ヘルパーの職業能力向上に有意な影響を持っていない ということが明らかになりました。ヘルパーの総合的な職業能力向上には 「介護の仕事の経験年数」や「主に身体介護を経験してきたこと」「教育研修の受講」に加え「所属事業所のサービス提供責任者の人事管理能力」が影響を及ぼすことがわかりました。

さらにヘルパーの定着率とサービス提供責任者の役割との関係を分析してみると サービス提供者の配置が配置基準をみたしており ヘルパーへの研修・指導時間を十分にとっているほど ヘルパーの定着率が高いこともわかりました。

これらの結果を踏まえ 同研究所の堀田聰子助手は「サービス提供責任者が十分な人事管理能力を発揮することはヘルパーの定着促進につながり 継続的なヘルパーの能力開発も可能にする」として サービス提供責任者が十分に人事管理能力を発揮できる環境づくりの必要性を強調していました。

次に サービス提供責任者の人事管理能力の規定要因について分析してみた結果「ヘルパーへの指導機会」「サービス提供責任者としての経験年数」が関係していることがわかりました。またヘルパーの場合と同様に ヘルパー1級や介護福祉士資格の保有の有無は 管理能力と関係がないということも指摘されました。

サービス提供責任者の重要性はうなづけるところですが その能力が保有資格とは関係しないというところが興味深い点です。

ということは 今回の基準見直しで「サービス提供責任者が十分な役割を果たしていない」という指摘は妥当だとしても その解決策として提案されている「3年以上の経験を有する2級ヘルパーをサービス提供責任者として認める経過措置の3年後の廃止」はナンセンスだということにほかなりません。

なぜ 資格の保有がサービス提供責任者の管理能力に関係しないかについては この研究会でもヘルパー1級や介護福祉士の取得課程に「人材マネジメント」に関する学習内容がないからだと指摘されています。

国においては ようやく「介護サービス従事者の研修体系のあり方に関する研究会」において 介護福祉士の新研修体系に「組織志向」というキャリアパスが示されたところです。手前みそになりますが 弊社の<介護福祉MBA>は このマネジメント能力開発が事業の要であるという視点で 作り上げた教育研修システムです。

このマネジメント能力養成の重要性は 訪問介護のサービス提供責任者だけではなく 他の介護サービス事業の管理者や所長といった管理職に共通するものです。

事業者淘汰の時代を迎え もう一度事業者のみなさまの教育・研修の見直しと再構築に猶予はありません。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

  • URLをコピーしました!
目次