2008年9月号

ウエルビーコラム 2008年9月号

業界成熟化の前提はマネジメントの進化
特養倒産と有料老人ホーム業界再編から見えるもの

先ごろ 兵庫県加古川市の社会福祉法人が民事再生法の申し立てを行ったことが報じられました。同法人は 特養2施設・老健1施設さらには有料老人ホーム1施設を運営しており 直近となる2008年3月期決算では 約11億4,103万円の収入を計上したといいます。負債額は約43億700万円と見込まれています。

社会福祉法人として初めての民事再生法の適用申請が目新しいため 「すわ社会福祉法人にも淘汰の時代」とジャーナリストとしては格好のニュースソースというところでしょうが このケースがそうとは言い切れないでしょう。

これまでも ずさんな経営の果てに「身売り」した社会福祉法人は 決して少なくありません。社会福祉法人も「傘下に持つ」介護事業の経営体が経営に行き詰り 民事再生という企業の世界では一般的な倒産手続きを選択したといったほうがいいように思われます。

2008年の介護事業者の倒産は 2000年の介護保険制度創設以来 史上最速(最悪)のペースで増えています(東京商工リサーチ調べ)。 本年1月から5月の5か月だけで 破産や民事再生法適用の申請など法的整理に 銀行取引停止処分などの私的整理も含んだ「倒産件数」は すでに21件にのぼり 過去最悪だった2007年の35件の60%にも達しています。負債総額でみるとさらに深刻で100億9,300万円と 過去最悪だった2006年の114億7,900万円の90%近くにもに達しています。

特に目立つのが有料老人ホームなどの施設系事業で 件数で17件 負債総額で9,759億円と いずれもすでに昨年の実績(12件・6,968億円)を超えています。有料老人ホーム大手の間でも 最近激しい動きが続いています。 メッセージが積和サポートシステムを子会社化。ライフコミューンの筆頭株主だったレオックが 同社の株を不動産事業のキノシタグループに売却を決定。ゼクスが投資ファンドとの資本提供を前提に 同社100%子会社のゼクスコミュニティの会社分割を発表。などなどM&Aがらみの事業再編が加速しています。

肯定的には 事業・産業の成熟化のひとつの過程として捉えることができます。一方 先の加古川市の特養をはじめ個々の事例を精査すると 事業プランそのものの未熟さも目につきます。「マネジメントと経営者の進化が伴わない業界の深化はありえない」というのが 偽らざる業界事情だといえるでしょう。

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