2011年6月号

ウエルビーコラム 2011年6月号

「専門家」の言に疑義あり
「国策」大規模化は自明の理か

先日 衆議院厚生労働委員会で介護保険法改正案が一部修正(社会医療法人の特別養護老人ホーム参入を認める項目の削除)のうえ可決されました。
先行きが危ぶまれた時期もありましたが このまま本会議・参議院でも可決成立となりそうです。
となると次の焦点は サービスの中身と報酬を議論する社会保障審議会介護給付費分科会に移ることになります。

この間の同分科会の議論で気になることがいくつかあります。
そのひとつが事業の大規模化についての言及です。
いわく「介護事業のアキレス健は『零細体質』にある」
「小規模事業者では研修もままならず質の向上は望めない」
……

大規模事業者の方が「規模の利益」を享受でき 効率的な事業経営が可能なことはあたりまえです。
しかし 個別の経営体を考えたときにすべての事業者が「大規模化すべき」 という経営判断をするとは限りません。
その理由は
①サービス業では「規模の利益」が得にくい
②「地域密着」の介護事業では大規模化がもたらすディスアドバンテージも少なくない
③介護事業の中でも設備・装置のいらない訪問系サービスでは「規模の利益」が得にくい
④同じ訪問系でも訪問介護は登録型提供者(供給側)による量的拡大は比較的容易で利益も大きいが 訪問看護や訪問リハビリでは供給側にネックがある
など 数え上げればきりがないほどです。

にもかかわらず「一律」「政策的」に大規模化へ誘導するには無理があります。
しかも 「マネジメント」のことなどご存じないような旧態依然とした学者さんにかぎって(もちろんすべてではありません)が 大規模化を自明のごとく主張しているのは噴飯もの といってしまっては礼を失することになるのでしょうか。

存在意義のない事業者は 規模にかかわらず「市場」(準市場である介護保険事業であれば「社会」といったほうがいいかもしれませんが) によって淘汰されるべきです。
小規模でも「強く」「顧客から評価される」事業者と規模の利益をフルに活用した事業者が併存していく産業構造こそが 新しい可能性を拓いていくはずです。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

  • URLをコピーしました!
目次