2011年8月号

ウエルビーコラム 2011年8月号

被災地復興のキーファクター
医療と介護の専門人材の結集を

総務省が毎月集計している「サービス産業動向調査」の 5月分の結果がまとまり 公表されました。
この調査によれば「月間売上高は21.3 兆円で 前年同月比 5.5%の減少」「従事者数は2,544 万人で 前年同月比 2.5%の減少」とされました。
しかし 従事者数を産業別にみると「教育,学習支援業」(93 万人・前年同月比 5.1%減)「サービス業 (他に分類されないもの)」(275 万人・同 5.1%減)など8産業で減少していますが「医療・ 福祉」だけが 645 万人(前年同月比 0.1%増)と増加しています。

また今月の調査には 東日本大震災の影響を把握するために事業所の所在地により東日本と西日本に分けて集計を行った「東日本大震災がサービス産業に与えた影響」という参考情報が掲載されています。
東日本・西日本別に月間売上高の前年同月比をみると 東日本は本年3月が10.1%の減少の後 4月は8.5%の減少 5月は6.5%の減少。
西日本は3月が6.9% の減少の後 4月は5.8%の減少 5月は4.1%の減少と 予想にたがわず 西日本に比べ東日本が大きく減少している状況が明らかです。

月間売上高の前年同月比と(東日本大震災前の)平成23年2月の前年同月比とのポイント差(平成23年3月以降の各月の前年同月比-平成23年2月の前年同月比)をみると サービス産業全体では 西日本の平成23年5月は 0.3ポイントの低下と東日本大震災前とほぼ同水準まで回復していますが 東日本は2.0ポイントの低下と震災前の水準まで回復していません。
しかしこれも 産業別の「医療・福祉」でみると 西日本は0.2ポイント増 東日本でも-1.2ポイントと サービス産業全体の水準を上回る回復を見せています。

これは 医療や福祉が 一般のサービス産業とは異なり「成長産業である」「景気動向に左右されない」「被災を受けた地域でのニーズは増えこそすれ減少しない」 ことの証左だといえます。
ところが 労働集約的しかも専門性のある人材が不可欠な医療や福祉の特性を考えると このままでは復興もおぼつかないという今後の不安も同時に存在しています。

フランスのシンクタンクとキヤノン グローバル戦略研究所が先ごろまとめた「東日本大震災後の医療・福祉復興プラン」では「医師・看護師・薬剤師・放射線技師・臨床工学技士など医療専門人材が他地域に散逸することを大至急防止しなければならない。そのためには新体制ができるまでの生活保障が不可欠。また 既に他地域に転職した人材を呼び戻す優遇策も考える」ことを提言しています。
同様な方策は 福祉・介護の分野においても不可欠です。
同プランでも「長期的には復興の必要財源は医療より福祉の方が大きいと予想される」としています。

地元自治体・政府には「医療・福祉の専門家の結集が 被災地支援のキーファクターである」ことを強く認識していただかなければなりません。

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