2015年2月号

ウエルビーコラム 2015年2月号

「プランスーパーB」の可能性
幸せな高齢者の近くには幸せな人々

内閣府の調査などによると「日本の高齢者は諸外国の高齢者に比べて幸福感が低い」とされてきました。
諸外国では 熟年層に入る頃には自分の人生がある程度定まってくるので 若い頃の野心をあきらめざるを得ないから幸福度が下がるが 高齢期に入ってからは考え方を変え 後半の人生を楽しく充実させようと努力するから幸福度がまた高まると考えられ 年齢と幸福の間にU字型の関係があるとの結果が出ているものが多いとされています。

一方 わが国の推計では「U字型にはなっておらず 67歳を底にして79歳にかけて幸福度はほとんど高まらないL字に近い形状を取って」(平成20年版国民生活白書)いると報告されています。
ところが「心身の機能が衰えても幸福感が高い高齢者は多い」(1月31日付け「日本経済新聞」夕刊)という記事を読みました。
100歳以上の高齢者(百寿者)の調査を行っている権藤恭之・大阪大学人間科学研究科准教授がインタビューに答えたものです。

対象者を 全く障害がない「極めて優秀群」・視聴覚に問題はあるが障害はなく自立している「正常群」・認知機能か身体機能に障害がある「虚弱群」・両機能に障害がある「非常に虚弱群」の4グループに分類したところ「一般の高齢者は日常生活の自立度が下がると幸福感も低下するが 虚弱群の百寿者の幸福感は 優秀群や正常群と比べて違いがなかった」という事実が判明しました。

「人は虚弱になっていく過程で 辛いことでなく楽しいことに目を向けようとする心の変化が起き 辛い現実を受け入れ 適応している。精神的・物質的世界に対する認識が加齢に伴って変化する『老年的超越』(物質的・合理的見方から より神秘的・超越的な見方に移行することで 人生の満足感が増すとの考え方)といわれる心理的変化が生じている」としています。

加えて「百寿者が自分一人の力で幸福を手に入れているわけではない。調査で出会った人の多くは家族や周囲の人々に大切にされ それが幸福感の源泉になっているように見えた。家族との関係がうまくいかず施設に入っている人は概して不満から幸福感が低く 施設でも周囲と良い関係を結んでいる人は幸福感が高い傾向がある…幸せな高齢者の近くには幸せな人々がいる。人生の終末期をうまく見守ることで 支える側も心の豊かさを共有できるのではないか」」と述べています。

先月号のコラムで取り上げた来日中の『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティは インタビューで「私は成長を否定したりなどしていない…ただし先進国は年5%成長に戻れない。長期的には年1~2%だろう。それもまた事実なのだ。戦後の高成長期に戻れると思うのは幻想で 現実の成長に合わせたプランB(代替策)を考えるべきだ」(2月1日付け「日本経済新聞」)と語っています。

「人は老いてゆきついには死に至る」という事実と同様に 社会や人類も成熟化していくことは避けられません。
だからこそ 私たち一人ひとりがイノベーションに寄与することで「富めるものと貧しいもの」「奪うものと奪われるもの」という二項対立から超越するための「プラン”スーパー”B」の可能性が生まれるはずです。

※ 2月15日(日) 介護給付費分科会の介護報酬諮問・答申を受けて 「2015年介護報酬改定から地域包括ケアの未来を探る」セミナーを開催します。 介護給付費分科会委員と中医協委員を兼ねる 医療・介護連携と地域包括ケア 構築のキーマン鈴木邦彦・日本医師会常任理事を迎え 2015年のみならず 山場の2018年・高齢化の到達点2025年を見据えた事業の羅針盤をお示しします!

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

  • URLをコピーしました!
目次