2016年10月号

ウエルビーコラム 2016年10月号

予算・執行から地域マネジメントへ自治体に「覚悟」はあるか
介護サービス事業者が総合事業に参入できないわけ

毎日新聞は 10月2日の紙面で「軽度介護 細る担い手 国 財政難で重度者シフト」というタイトルで「軽度(要支援1・2)の介護保険利用者向けに国が始めた新方式のサービスが十分提供されない恐れがある」と報道しています。
同紙の自治体調査では「(介護予防・日常生活支援総合事業の)報酬は平均2割減となり 訪問介護で従来規模の半分 デイサービスは約3割の事業所しか参入していない」としています。
理由はいたって単純で セントケア・ホールディングの常務取締役執行役員が同紙に語ったように「長時間やってもビジネスにならない」からです。
以下の表は 東京都の区部における 通所介護の現行相当サービスとA型サービスの単価をまとめたものです。

給付費削減のターゲットとして 大幅に報酬単価を切り下げられた通所介護事業者にとって さらなる収入源が明らかな日常生活支援総合事業は やりたくても手を出せない領域なのです。
新しい総合事業の担い手として期待を集めているNPOの側からは 次のような見解も示されています。
法人市民福祉団体全国協議会(市民協)の田中尚輝・専務理事は  自身のブログ(田中尚輝のブログ) で「私が予測したように進んでいる。最初厚労省・自治体は甘く見ていた。自治体が言えば 業者は参入するだろう と。ところがそうは甘くない現実に直面している」と述べています。
「給付」から「事業」移行しつつある軽度者向けのサービスの主体は 住民・市民の自発的な活動であり そこで働く人々は「賃金労働者」ではなく「自発的なボランティア」なのです。
介護保険の保険者であり 新しい総合事業に一義的な責任を有する多くの市区町村は このようなパラダイムの転換を理解しておらず やみくもに「安上がりの介護サービスまがい」をつくりあげようとしているのが現状です。
給付費と事業費を単純な唯一の定量的指標として事業を「執行」しようという 旧来の自治体の手法では これからの地域づくりは前に進んでいきません。
「予算・執行」から「地域マネジメント」へと舵を切りきれない自治体の最大の被害者は なんといっても住民なのです。
中長期的なビジョンのもとに 地域ニーズと転換フェーズに合わせた サービス提供主体とサービスづくりを 住民とともに協働していく「覚悟」が問われます。

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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