2018年9月号

ウエルビーコラム 2018年9月号

介護職員には上昇志向がない!?
自己実現と組織理念のギャップの解消が鍵

介護労働安定センターが毎年実施している
「介護労働実態調査」
の2017年度結果が公表されました。
この調査では、介護労働者に対して「あなたは今後、より上位の職位を目指しますか」という設問が設けられています。
回答は「より上位の職位を目指す」が23.1%に対して「今のままでよい」が75.8%と3倍をはるかに超えています。
この設問は2016年度から設定されており、そこでも「より上位の職位を目指す」が21.7%、「今のままでよい」が72.5%と、同様の傾向が示されています。

2017年度老人保健健康増進等事業「介護人材の働き方の実態及び働き方の意向等に関する調査研究事業」報告書
(日本総合研究所)では、以下のような調査結果が報じられています。
介護職員のキャリア意向については、「介護人材の働き方の実態及び働き方の意向等に関する調査研究事業」報告書(日本総合研究所)では、以下のような調査結果が報じられています。
「キャリア目標の検討状況については、おおむね6割程度は何らかの目標を考えており、どのサービス類型においても1割強は具体的な計画を検討している」
ことが明らかにされています。
キャリア目標について考えていると回答した従事者について、最も実現したい目標をみると、「介護の特定分野に関する高度なプロフェッショナル」「ケアマネジャー」の割合が大きくなっています。

労働政策研究・研修機構(JILPT)が、2015・2016年の両年にわたり、全国の21事業所(法人、協議体所を対象として実施したヒアリング調査(「介護労働者の定着・満足度を高めるための事業所の取り組み」2017年3月)は、「介護労働者の全てが管理層になることを目標としているわけではなく、介護の現場で技能を磨き上げることや人に満足感や安らぎを与えることこそが喜びであるとする層も少なくないことから、きめ細かな対応が有効である」と指摘しています。

「介護サービス業従業員満足度調査」
(リクルートキャリア・2017年1月)では、従業員満足度向上のポイントについて、以下のような分析を行っています。
●従業員満足度向上に最も影響を与えているのは、「職員が楽しそうに仕事をしている」、次に「尊敬できる職員が多い」という
「職場における連帯感」
●以下、
「仕事の成果」
(いまの仕事を通じて成長できている)
「仕事の質」
(今の仕事は責任が重過ぎるため、私には負担である;負の影響)
「仕事の特性」
(決められた進め方に沿って着実に実施できている)が上位

こられの調査から見えてくるのは、介護職員は上昇意欲を持っていないわけではなく、専門性を磨きたいと考えている優秀な職員は少なくありませんが、彼ら(彼女ら)は現在のキャリアラダーに魅力を感じていないということです。
また、優秀な人間から辞めていく職場は、組織体系が硬直しており、ロールモデルになる上司や先輩が見つからず、具体的な目標を失っている可能性が高いということです。
いま、介護事業に必要なのは、旧来のマネジメント手法やお仕着せのキャリアパスを盲目的に適用することではありません。
介護事業に身を投じてくる人材は「自己実現」と「組織理念」のギャップにますます敏感になってきています。
自分自身の目標が組織目標と「目に見える」形でつながっており、自己の成長と組織の成長をともに実現できるというビジョンを掲げた事業者が求められているといえるでしょう。

 株式会社ウエルビー 
 代表取締役 青木正人

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