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月刊コラム

2019年5月号

2019年5月号

増税なしでも医療・介護は破綻しない!?
極めてイデオロギッシュな経済財政論

 

「日医ニュース」4月20日号のコラム「プリズム」は、スペインの哲学者オルテガ(José Ortega y Gasset)の「専門家は大衆」という『大衆の反逆』に出てくる言葉を引用しています。

「近代以降、科学分野を中心に専門化が進行し、自分の専門しか知らない学者が増えている。…根源的なことを考えない、単なる技術屋になっている。そうした単純な『技術屋』達こそが典型的な大衆だ」というオルテガの主張を記しています。

ほんの一部しか知らないのに「俺は何でも知っている」と偉そうな顔をするような人間をオルテガは嫌悪したと続けたうえで、「現代社会でオルテガから最も嫌悪される専門家を挙げるなら、経済の専門家と言われる人達ではないでしょうか」と辛辣な言葉をあびせています。

最近、わが国の国会財政制度等審議会(財政審)でも、「現代貨幣理論」(MMT:Modern Monetary Theory)が取り上げられ、大きな反響を呼んでいます。
MMTとは「インフレにならない限りは、財政赤字をどれだけ膨らませても問題はない」とする、昨今話題の経済学説です。
主唱しているのは、米国民主党のバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員のアドバイザーを務めたこともある、ステファニー・ケルトン(Stephanie Kelton)ニューヨーク州立大学教授らです。
彼らがMMTの成功例として挙げているのが、政府債務がGDPの240%に達してもクラッシュしない、他ならぬ日本です。

MMTが主張しているのは、「通貨を発行できる政府が、その自国通貨を返せなくなることなど、論理的にあり得ない」という事実です。
しかし、これはあくまでも事実でしかありません。
日本に20年間インフレが起こらなかったのは、ずっと金利がゼロで物価も上がらなかったからに過ぎないといえるでしょう。

この理論とも呼べない事例を根拠に、米国で無制限に通貨を発行し続けるなど考えただけでも恐ろしい結末が待っています。
また、日本が永遠に消費増税を先送りできるなど夢物語でしかありません。

MMTが専門家の大衆化の証左なのかどうかはわかりませんが、極めて政治的な動機やイデオロギーがその背景にあるのは容易に想像ができます。
アダム・スミス(Adam Smith)やリカード(David Ricardo)を持ち出すまでもなく、そもそも経済学は政治経済学として誕生したからです。

介護保険制度創設時に大きな役割を果たしたのは、社会福祉の学者たちではなく、経済学者たちだったことを思い出します。

株式会社ウエルビー 
 代表取締役 青木正人

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