2019年7月号

特定処遇改善加算の真の意義とは!?
医療・介護の生産性指標はQOL

6月のコラムで「生産性の向上」を取り上げましたが、「骨太方針2019」が取りまとめられたこともあって、先月は学者やエコノミストがこぞってこのテーマを論じています

井伊雅子・一橋大学教授と中村良太・一橋大学准教授は「評価対象、適用の拡大を」(6月19日付日本経済新聞「経済教室 医療に費用対効果の視点(下)」)で、医療の生産性に関して言及しています。 医療サービスの効率性は費用と効果の両面をあわせて測られるため、わが国でもこの4月から本格導入された「医療技術評価」(医療技術の向上や普及、実用に関する医学的・社会的・倫理的、経済的な意義について研究する政策分析)を「良い医療」を提供するためのエビデンスづくりと意思決定のプロセスとして重視すべきとしています。

重要なのは、医療技術評価の目的が医療費削減ではないという点です。
費用が高くてよく効く医療と費用が高い割に効かない医療を切り分け、限られた予算を効率的に配分する優先順位付けを行うためです。
高度医療機器での検査や診断をして、高額な医薬品を投与すること、贅をつくしたものが本当に良い医療なのだろうか。
【医師一人当たり年間外来患者数と1回当たり医療費の国際比較】

これは私たち一人ひとりに投げかけられた、たいへん重大な問いです。 医療や介護の生産性を単純に「付加価値生産」であると定義してしまうと、公定価格である診療報酬や介護報酬をアップさせれば「付加価値」は上昇します。
これで「生産性」が向上するとは誰も思いません。 たとえば日本の医療の生産性は、1回当たり医療費という付加価値生産性で比較すると世界で最低レベルですが、医師一人当たりの患者数を指標にすれば世界有数になります(右図参照)。

介護報酬の分野では、消費増税を受けて10月から「介護職員等特定処遇改善加算」の算定がはじまります。
はたして、この加算は生産性を上昇させることになるのでしょうか。
この加算が唯一、生産性向上に寄与できるとすれば利用者のQOLの向上をもたらす場合だけです。
8月末の締め切り向けて、中期ビジョンはお持ちでしょうか。
8/10(土)上記の視点で利用者満足と事業の発展を実現するKPIをわかりやすく解説する少人数セミナー介護職員等特定処遇改善加算を活かす事業経営!-制度に左右されない強い組織づくりのために緊急開催します。
詳細とお申込書はこちらからご覧になれます。

株式会社ウエルビー 
 代表取締役 青木正人

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