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月刊コラム

2019年9月号

2019年9月号

ネガティブな年金報道から見えるもの
長生きがリスクで終わらない社会に

先月末、公的年金財政の健全性を5年に一度点検する財政検証が厚生労働省の社会保障審議会年金部会で提示されました。

新聞各社もこぞって1面で報道しています。
「年金水準、見通し改善せず 30年後に2割減 財政検証」(朝日新聞)
「財政検証 給付水準2割減 28年後、現役収入の5割に」(毎日新聞)
「年金、68歳まで働く必要 制度改革急務 いま20歳が現状水準もらうには 財政検証」(日本経済新聞)
まさに年金財政は「危機的状況で、破綻は目の前」と思わせうような論調です。

他方、「2047年度以降の年金も…現役収入の『5割超維持』」(読売新聞)
「年金、現役収入の5割維持 財政検証公表、経済成長が前提」(産経新聞)
という見出しもありました。

そもそも2004年年金制度改革において、以下のような年金財政の枠組みが構築されています(図参照)。
【2004年年金制度改革による長期的な財政の枠組み】

① 2017年度以降の保険料水準の固定
② 2009年度以降、基礎年金給付費に対する国庫負担割合の2分の1への引き上げ
③ おおむね100年間で財政均衡を図る方式として、積立金を活用し後世代の給付に充当
④ マクロ経済スライド(財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み)の導入

そういう意味では、今回の財政検証結果のポイントとして示されたように「経済成長と労働参加が進むケースでは、マクロ経済スライド終了時に、所得代替率は50%以上を維持」というのは、おおむね良好な診断結果といっても差し支えないのではないでしょうか。
とはいえ、所得代替率が50%を下回らなかったから、年金改革は今後一切不要ということではありません。
 
重要なのは、給付水準を改善するために示されたオプション試算です。
オプション試算は
A  被用者保険の更なる適用拡大
B  保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択
の二つです。
 
とりわけ意味があるのは、オプションBです。
その内容は、現在60歳までの年金保険料の拠出(支払い)を65歳になるまで延長し、拠出年数が伸びた分、基礎年金を増額させるというものです。
加えて「収入が増えると年金が減額される在職老齢年金の見直し」「厚生年金の加入年齢の上限の70歳から75歳への延長」「受給開始の繰下げによる増額」が提示されました。
 
試算の結果「就労期間・加入期間を延長することや、繰下げ受給を選択することは、年金の水準確保に効果が大きい」との結果が明らかになっています。
拠出年数の延長によって、保険料を多く払えば、年金も多くもらえ、給付の目減りを防ぐことができます。
65歳まで働ける環境を整え、保険料を払う余裕がある人には65歳まで保険料を払ってもらう。
もちろん、働きたくない人に65歳まで働くことを強制するものではありません。
 
「人生100年時代」といわれる今日、生き方や働き方の多様性が求められています。
「長生き」が「リスク」としかとらえられない社会に希望はありません。
最終的に年金のあり方だけでなくこの国の姿を決めるのは、私たち国民自身です。
年金、社会保障というセーフティーネットを政争の具とするのではなく、国民により身近でわかりやすい選択肢として提示するのが、与党・野党を問わず政治の責任です。

株式会社ウエルビー 
 代表取締役 青木正人

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