2019年11月号

介護・ケア職の成長志向を伸ばす!
個業化を防ぎ専門性を担保する職場づくり

10月末、松山市で開催された全国老人福祉施設研究会議で、現場からの研究発表の審査員を務めました。
テーマは「2040年を見据えた人材採用・育成・定着戦略 人材確保後の育成・定着に係る取組みです。

発表を行った各施設・事業所の取組みは、それぞれ背景や個性が多様で、どれも傾聴に値する内容ばかりでした。
私は、そんな現場の努力にエールを送る意味で「人材定着と成長を促す組織づくり」という特別報告を行いました。

介護職員は上昇志向に乏しいという風評がありますが、それは一面的な見方にすぎない。介護職員は他の産業の労働者に比べて高い成長志向を持っていることを、自ら自覚してほしいという意図を込めたものです。

社会に貢献する仕事を通じて専門性を高めたいという、職業人としては極めて高い志を持っていることが各種の調査・研究からもうかがえます。
【介護職の仕事観は?】

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
出典「介護人材の離職実態調2017」パーソル総合研究所/ベネッセ シニア・介護研究所

では、その高い意識を現場のやりがいとモチベーションそして定着につなげていくためには何が必要なのでしょうか。

その一つのヒントは、この日の会議の田中康雄・浦和大学准教授の発表にも現れていました。
氏によれば、介護職員に離職者はユニット型施設のほうが、従来型施設よりも有意に多いというのです。
しかも、これまでの教育・研修だけでは離職防止に資するものがそう多くはないということです。
これを私なりに解釈すると、介護現場でも「個業化」が進んでいるということだということです。

他の産業や職種においても、IT化などにより専門化、細分化が進み、コミュニケーションが不足していることが課題として指摘されています。
介護の現場においても、専門性を高めることが個業化につながらない仕組みづくりが欠かせないということです。
専門性という名のタコツボに陥るのではなく、職場自体に業務を支援する役割だけでなく、個々職員が、精神的な安定を与えたり安全な場を確保することを担保する「精神的支援」と、職員自身が自らを振り返るための「内省支援」が求められているといえます。
人をケアすることが目的の介護や医療の事業であれば、職員・成員が成長していくためのケアする組織であるあることが必要であり、その実現も可能だといえるでしょう。

株式会社ウエルビー 
 代表取締役 青木正人

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