2020年11月号

厚生労働省の2つの発表から探る未来
来年の出生数は70万人台に!?

厚生労働省は、先ごろ「令和時代の社会保障と働き方を考える」がテーマの「令和2年版厚生労働白書」を公表しました。
平成の30年間を振り返りつつ、その間の変容と今後20年の推計データを紹介しながら、新型コロナウイルスの影響も含めて今後の方向性を整理しています。
    【平成の30年間と2040年にかけての変容】

高齢化がピークを迎える2040年頃を視野に入れた施策や調査結果が盛り込まれ、「人生100年時代」「担い手不足・人口減少」「新たなつながり・支え合い」「生活を支える社会保障制度の維持・発展」という4つの方向性に沿った対応の必要性が提示されています。

高齢者人口がピークを迎える2040年に、医療福祉従事者は全就業者の2割に当たる1070万人必要になると推計し、人手不足や人口減少が進む中、ICTを活用するなどして生産性を高めることが急務だとしています。

担い手不足が生じる根本的な原因は少子化の進行であり、女性や高齢者の就業率の一層の向上とともに、働く人のポテンシャルを引き上げ、活躍できる環境整備が必要だと指摘しています。

 【妊娠届数の推移】

ところが厚生労働省が発表した集計(10/21)から、新型コロナウイルス感染症の影響により、出生数が激減する懸念が高まっています。
同省によると、自治体が1~7月に受理した妊娠届の件数は約2万8千件減の51万3850件と、前年同期に比べて5.1%減っています。
雇用情勢の悪化などで結婚・出産を控える人が増えている可能性も指摘されており、コロナ禍によって日本の人口減少に拍車がかかる恐れが出てきました。

日本の人口は少子高齢化で11年連続で減少しており、2019年の出生数は86万人と統計開始後初めて90万人を割り込んでいます。
今年の出生数は85万人を割り込み、統計を開始した1899年以降で過去最少の84万人台半ばとなる見通しとされています。
「今後も出産を控える動きが続けば、来年の出生数が70万人台まで落ち込むシナリオも現実味がでてくる」(10/22日本経済新聞)という指摘もあります。

先月のコラムで述べたように、社会環境の複雑性が増大し、想定外の出来事が次々と起こり、将来予測が困難な状況が恒常化するVUCAの時代がまさに現実になってきました。

まず「厚生労働白書」の描く未来さえも、信頼するに値しないという事実を真摯に受け止めることから、私たちの進む道はスタートしていくのでしょう。

                                  株式会社ウエルビー 
                                  代表取締役 青木正人

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