総選挙と「社会保障」(2026年2月)
総選挙と「社会保障」
手取り増と持続可能性
2026年の衆議院総選挙では、消費税の減税や社会保険料の引き下げが大きな争点として取り上げられています。
確かに、家計負担を軽くするこうした施策は多くの有権者の関心を集めています。
しかし議論が「手取りを増やすこと」に過度に集中するあまり、本来もっと深く議論されるべき社会保障制度の根幹と持続可能性に目が向かっていないように感じられます。
まず国の「国民負担率」について整理しておきましょう。
国民負担率とは、税と社会保障負担(社会保険料など)を合わせた国民所得に対する比率を指します。
直近のデータでは、日本の国民負担率は対国民所得比で約45%台と高止まりしていますが、これはOECD加盟国中で比較すると中程度の水準に位置しています。
例えばフランスやスウェーデン、ドイツなどは日本より高い負担率です。日本は欧州の高福祉国と比べれば負担率は低い一方、租税と社会保障負担が合わせて高い水準にあることがわかります。
同時に、家計と企業の所得に占める社会保険料の割合を見ると、日本は18%前後となっており、フランスやドイツの平均を下回っています。
これは社会保険料負担そのものが諸外国に比べて決して突出して高いわけではないことを示しています。
このような構造的背景を踏まえた上で、主要政党の「社会保険料・社会保障」に関する主張を整理します。

自由民主党
現政権は現行の社会保障制度を維持しつつ、経済成長による財源確保を重視しています。消費税については食料品の税率を2年間ゼロにするなどの減税策を掲げていますが、社会保険料の抜本的な引き下げについては明確な数値目標を示していません。代わりに、制度の骨格を維持しつつ給付の充実や処遇改善を進めるという立場を取っています。
日本維新の会
維新は「高すぎる社会保険料を下げる改革」を強調し、現役世代の社会保険料を 年間6万円程度引き下げる 具体策を掲げています。この財源として、医療費の削減や高齢者負担の見直しを主張していますが、その実現可能性については専門家の間でも賛否が分かれています。
中道改革連合
この連合は、社会保険料還付制度の創設や「手取りを増やす」政策を打ち出し、消費税の恒久的な食料品税ゼロの実現などを訴えています。現役世代の負担軽減策を重視する立場ですが、持続可能な制度設計の観点からは財源確保や制度全体の長期的な安定性についてさらに具体的な議論が求められます。
国民民主党
国民民主党も社会保険料の軽減を打ち出しつつ、所得税の減税やいわゆる「年収の壁」の解消にも取り組む方針です。手取り増加を一貫した政策テーマとしていますが、財源確保の具体的な仕組みについては明確な説明が求められるところです。
参政党
参政党の公約では、減税と社会保険料の削減によって国民負担率を 45.8%程度から35%へ 抑えるといった大胆な目標が掲げられています。負担比率そのものを大きく引き下げる政策提案は他の党と比べても特徴的です。
日本共産党
共産党は「国民の暮らし第一」を掲げ、物価高対策や生活支援を重要視していますが、社会保険料負担の引き下げに関して明確な数値目標を掲げるよりも、負担と給付のバランス全体を再設計するという立場です。高福祉国家に倣った支援策を重視する傾向が見られます。
このように各党の主張は分かれていますが、共通して言えるのは「負担を軽くしたい」という現役世代の強い思いを受け止めている点です。
しかし、社会保障制度は長寿化・少子化が進む中で、その財源や給付水準を将来にわたって確保する仕組みが不可欠です。単純に社会保険料を引き下げることで手取りが増えたとしても、制度の持続可能性が損なわれれば、結果として給付の目減りや不公平感の増大を招きかねません。
社会保障の議論は、現役世代の負担感だけでなく、「将来にわたって安心できる制度」をどのように設計し強靱化するかという視点が欠かせません。総選挙の争点には、ぜひこうした根本的な議論が含まれることを期待したいと思います。
株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人
1955年富山県生まれ。
1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。
大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。


