2020年4月号

問われる私たちの心と意識の変容
コロナ「後」ではなく「今」

今月に入っても、新型コロナウイルスの脅威は増すばかりです。
終息までには、まだかなりの時間を要することになるでしょう。
制圧後のことをうんぬんするのは早計だと言われそうですが、感染症そのものの危機以外にも憂慮すべきことは、あまたあります。

ベストセラー『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(Sapiens: A Brief History of Humankind)の著者で、イスラエルの歴史学者・哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)氏は、「TIME」誌日本経済新聞への寄稿「今こそグローバルな信頼と団結を」「信頼の再構築がカギ」と訴えています。
   【天然痘の蔓延地域 1945年と1967年】

  

人類が経験した天然痘制圧の歴史を見ると、1967年時点でも、まだ1500万人が罹患し、そのうち200万人が亡くなっています。
しかし、その後の10年間に天然痘の予防接種が世界中で推進され、1979年には、WHO(世界保健機関)が人類の勝利と天然痘の根絶を宣言しています。
そして今、天然痘にかかったり、天然痘で命を落としたりした人は皆無です。

ハラリ氏は、この歴史が現在の新型コロナウイルス感染症について教えてくれることが2つあると指摘しています。
ひとつは「国境の恒久的な閉鎖によって自分を守るのは不可能である」こと
もうひとつは「真の安全確保は、信頼のおける科学的情報の共有と、グローバルな団結によって達成される」こと
です。

ところが現実は、 大国同士が不信感をあらわに、ののしりあいを繰り広げています。
過去の人類の英知を忘れ去ったかのようです。

ハラリ氏は、「今日、人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウイルスのせいばかりではなく、人間どうしの信頼の欠如のせいでもある。今回の危機の現段階では、決定的な戦いは人類そのものの中で起こる。もしこの感染症の大流行が人間の間の不和と不信を募らせるなら、それはこのウイルスにとって最大の勝利となるだろう」と警告を発しています。

この危機を脱するためには、科学の進歩・発展以上に、人の心・意識の、個人や集団、一国のエゴを超えた、地球社会的な価値観に立った変容が必要となります。
それは、コロナ「後」ではなく、「今」問われれているのです。

                                  株式会社ウエルビー 
                                  代表取締役 青木正人

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