2022年8月号
2022年8月1日
ヘルスケアを俯瞰するための4冊
ピケティ、シラー、メイヤロフそしてハイデガー
医療や介護の現場に関わっている方々は、夏休みといっても長期間の取得は難しいかもしれませんが、コロナ感染の拡大を受けて旅行や帰省をあきらめ涼しい室内で読書三昧という方も少なくないのではないでしょうか。
そういう時期に直接仕事とは関わりはないものの、腰を据えてじっくり読んでみることを(個人的に)お薦めしたい4冊をご紹介いたします。
そういう時期に直接仕事とは関わりはないものの、腰を据えてじっくり読んでみることを(個人的に)お薦めしたい4冊をご紹介いたします。
一冊目は、数年前に全世界でベストセラーとなった『21世紀の資本』(トマ・ピケティ:Thomas Piketty)です。
600頁を超える大部でかつ難解という印象のため、手に取るのをためらいがちな書籍でもあります。
600頁を超える大部でかつ難解という印象のため、手に取るのをためらいがちな書籍でもあります。
しかし、r(資本収益率)>g (経済成長率)という不等式を見たことがあるという方は多いでしょう。
この本は先入観とは異なり、難しい数式はほとんど登場しません。
根気さえあれば、拡大し続ける「格差」に対する新たな視点が得られることは間違いありません。
自由主義的福祉国家の存続が危うくなった現在、安易なベーシックインカム論に傾くことなく、公正・平等な社会、国家の創造に大きな示唆を与えてくれる名著だと思います。
どうしても苦手だと言う方には、映画化もされていますのでDVDでの視聴という手もあります(私自身は観ていませんが)。
根気さえあれば、拡大し続ける「格差」に対する新たな視点が得られることは間違いありません。
自由主義的福祉国家の存続が危うくなった現在、安易なベーシックインカム論に傾くことなく、公正・平等な社会、国家の創造に大きな示唆を与えてくれる名著だと思います。
どうしても苦手だと言う方には、映画化もされていますのでDVDでの視聴という手もあります(私自身は観ていませんが)。
同じく経済の分野では、『ナラティブ経済学-経済予測の全く新しい考え方』(ロバート・J・シラー:Shiller, Robert J, )が新鮮です。
主流派経済学では、自己の経済的利益を極大化することを唯一の行動基準として経済合理的に行動する人間(経済人)を前提に理論が組み立てられていますが、現実離れしているのは自明です。
シラーは、過去から現在至るさまざまな経済現象を振り返ると、その背後には当時の人々の判断を変える特定の物語(ナラティブ:narrative)が存在するという事実(世界恐慌や不動産・株式市場バブル、ビットコインなど)を描き出しています。
しかもそのナラティブには「感染性がある」(ヴァイラル:viral)という特徴があり、新型コロナの感染拡大から収束に至る道筋とフラクタル(相似的な図形)であるという事実を示しています。
とりわけ印象的だったのは、機械化やオートメーション化が労働者の仕事を奪うというナラティブが、現在のICT化やDX化への拒否反応とダブって見えたことです。
続いての二冊は、哲学者の本です。
『ケアの本質-生きることの意味』(ミルトン・メイヤロフ:Milton Mayeroff )は、やさしい言葉で綴られた哲学書です。
原題は“On Caring”―“caring”(ケアリング)はケア(care)の派生語で、世話、介護、配慮、気遣いなどと訳される対人援助職分野にとって重要な概念です。
メイヤロフは、ケアの対象を人のみならず芸術、概念、理念というものにまで広げて考えています。
この本は狭義の対人援助職のためだけに書かれた単なるケア論ではなく、人間の本質を探究する人間学ともいえる内容になっています。
「私は、自分自身を実現するために相手の成長をたすけようと試みるのはなく、相手の成長をたすけること、そのことによってこそ私自身は自分自身を実現するのである」という「ケアをとおしての自己実現」が、大切な人間観として心に刻まれました。
この本は先年、若くして他界した小山剛さん(こぶし園元総合施設長)の座右の書でもあったことを申し添えておきます。
さて最後の一冊は、ハイデガー(Martin Heidegger)の『存在と時間』です。
この本をおすすめするには、かなりのためらいがありました。
同書は、読み始めたものの途中で断念した読者も多い「難解の書」として知られており、私自身も何度も投げ出しては、そのたびに再チャレンジを続けてきました。
作家のマーク・トゥエイン(Mark Twain)は「人生で最も大切な日は二つある。一つはあなたが生まれた日であり、もう一つはあなたがなぜ、生まれたのかを知った日である」という名言を残しています。
まさに、この問いの答えを探すために読み続けているというのが正直なところです。
第42節に引用された「クーラの寓話」には、ハイデガーが用いている「気遣い」(ゾルゲ:Sorge)が、人間という存在の本質であることが表現されています。
作家のマーク・トゥエイン(Mark Twain)は「人生で最も大切な日は二つある。一つはあなたが生まれた日であり、もう一つはあなたがなぜ、生まれたのかを知った日である」という名言を残しています。
まさに、この問いの答えを探すために読み続けているというのが正直なところです。
第42節に引用された「クーラの寓話」には、ハイデガーが用いている「気遣い」(ゾルゲ:Sorge)が、人間という存在の本質であることが表現されています。
いらぬお節介ともいえるお薦めですが、みなさんそれぞれが興味や好奇心を感じるきっかけになれば幸いです。
お節介ついでに、私がこの休暇中に読もうと思っている書籍をご紹介します。
『資本主義だけ残った―世界を制するシステムの未来』(ブランコ・ミラノヴィッチ:Branko Milanovic)『脳は世界をどう見ているのか―知能の謎を解く「1000の脳」理論』(ジェフ・ホーキンス:Jeff Hawkins)『古典の中の地球儀―海外から見た日本文学』(荒木 浩)の三冊です。
『資本主義だけ残った―世界を制するシステムの未来』(ブランコ・ミラノヴィッチ:Branko Milanovic)『脳は世界をどう見ているのか―知能の謎を解く「1000の脳」理論』(ジェフ・ホーキンス:Jeff Hawkins)『古典の中の地球儀―海外から見た日本文学』(荒木 浩)の三冊です。
どうぞ、よい休暇をお過ごしください。
株式会社ウエルビー
代表取締役 青木正人