外国人労働者と総裁選後の政局(2025年10月)

外国人労働者と総裁選後の政局
移民排斥がもたらす人口減少社会の未来

自民党総裁選挙では、候補者5人全員が外国人受け入れ規制に言及し、主要テーマの一つに浮上しています。
7月の参議院選挙でも争点となり、「日本人ファースト」を掲げた参政党が躍進を遂げた要因にもなりました。
中でも最も強硬な姿勢を示しているのが高市早苗前経済安全保障担当大臣で、従来の施策を「ゼロベースで見直す」と明言し、不法滞在対策や土地取得規制を訴えています。
日本政府は、一貫して「移民政策はとらない」との姿勢を示していますが、国民の間では反移民感情が嵩じているように思えます。

総裁選の論戦や自民党の提言には、「違法外国人ゼロ」を目指し、国民の安心・安全を確保するための外国人政策の厳格化の意向が示されています。
介護事業では、現実には外国人労働者がいなければ、現場が回らない状況の施設も少なくありません。
こうした動きは、特定技能受入れにおける「協議会参加」「支援体制」の整備義務、報告や面談など運用強化は事務負担を増やし、外部支援(受入事業者支援機関)への費用や専任スタッフが必要になり、事業者側の管理負担とコスト増を招く可能性があります。

外国人介護労働者の今後の受け入れ方針 出典:「2024年度介護労働実態調査」介護労働安定センター

こうした懸念は何も介護分野に限ったものではありません。
在留外国人の増加ペースは急激です。
2024年末の在留外国人数は376万人と、2023年末比で35万人(約10%)増加しています。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、日本の人口が2070年に今より3割ほど少ない8700万人まで減少し、そのうち外国人が939万人と全体の1割を超すと推計されています。

政府は移民政策を「人口に比して一定程度の規模の外国人とその家族を期限の制限なく受け入れること」だと説明し、日本の外国人受け入れの現状とは異なると主張しています。
現実には「移民は受け入れない」としつつ、人手不足に迫られて外国人労働者を受け入れてきました。
このままのペースでいけば、2040年には人口に占める外国人の割合が10%を超える可能性があるとも見られています。

在留外国人数の推移 出典:9月29日付日本経済新聞

現実と乖離した政府の主張は、建前が先行して真に必要な外国人労働者の受け入れを阻害しています。
日本が成長を確保するには、在留外国人との共生策も含めた長期的な戦略を描くことが欠かせません。

株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人

1955年富山県生まれ。

1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。

大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。

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