2005年10月号
ウエルビーコラム 2005年10月号
職員に「未来」を見せていますか!
ダイエー破綻と中内功氏の訃報に接して
ダイエーの創業者である中内功氏が逝去されました。まさに「巨星墜つ」という感に堪えません。 氏の業績や功罪については さまざまな論評がなされていますが 評価が定まるまでには一定の時間が必要でしょう。
批評は評論家に譲るとして マネジメントに携わるものとしては よきにつけ悪しきにつけ 学ぶべきことはたくさんあります。
そのひとつに 「V革」の成功と挫折があります。「V革」とは 1983年から始まった3期連続の連結赤字をV字型に回復するという使命のもとに行われた一大改革です。この改革は大成功を収め 文字通り業績は急反転し奇跡的な回復を遂げました。
改革のトップには 元のヤマハ社長の川上源一氏をすえましたが この改革を担った実働部隊は 生え抜きの中堅社員たちでした。この時期 中内社長は 一切口をはさみませんでした。 まさにこの時期が「中内商店」が「組織体ダイエー」に生まれ変わるチャンスだったのですが 残念ながら「V革」は3年で終焉をむかえ その後もとの木阿弥の超ワンマン体制に逆戻りしてしまいました。晩年には周りは「イエスマン」ばかりとなり 氏が「裸の王様」に擬せられたゆえんです。
このような悲劇は ビッグな企業に限ったことではありません。むしろ 中内氏のようなカリスマ性があったればこそ 個人商店的な経営でも業績があがっただけで 大多数のそうでない企業は日の目を見ないうちに消えていったはずです。
確かなことは ダイエーが人を育てられなかったことです。ダイエーの破綻は 会社は「人」であり 経営者以外がマネジメント能力が発揮できない環境であれば どんなに業績がいい企業でも破綻する という教訓を残してくれました。
介護事業のようなサービス業 しかも生活を支える対人サービス業は「人」が命であり財産です。しかし この「人」を 現場を切り盛りする職人的な人材としか捉えていない事業者がまだ多いのも事実です。
先ごろまとまった「介護サービス従事者の研修体系のあり方に関する研究会」の第二次中間まとめにおいても 介護福祉士のキャリアパスを保証するための研修コースを「熟練志向」「教育志向」「組織志向」の3パターン示しています。現場だけやれればいという職員だけでなく 組織志向の職員=事業所全体の管理責任者を目指す人材 の育成の必要性が喫緊の課題として認識されたということです(レポート参照)。
「生業」ではなく「事業」として介護事業が成熟しなくては 超高齢化社会に明るい未来はありません。
経営者のみな様には 職員に「未来」を提示する という大切な責務があることを忘れないでいただきたいと思います。