2004年5月号

ウエルビーコラム 2004年5月号

時代の要請は 規制強化ではなく情報公開
ケアマネ「囲い込み」排除論は自縄自縛を招く

最近 居宅介護支援事業所の 「併設型」を排除 「独立・中立型」への政策的移行論が 一部で唱えられています。この議論のなかには「自社系列事業所の介護サービスのプランへの組み込みの一律禁止」や「担当限度件数のしばりを行政指導から法的規制のレベルへ強化」といった声も聞こえてきます。

このような主張に いささか「時代錯誤」的な印象を抱くのは 私だけはないと思われます。 まず考えるべきは 「公平・中立」がケアマネの基本的倫理であるのは「イロハのイ」であるにもかかわらず 居宅介護支援事業所にあえて独立・中立型を謳わざるを得ない現状の根本はどこにあるのかです。

つまるところ 居宅介護支援事業所の大多数を「併設型」が占めているという現状は 国の政策誘導によるものです。介護保険制度の施行と同時に 膨大な数のケアマネジャーが必要とされたにもかかわらず 報酬は低く抑えられました。つまり併設事業所は 厚生労働省によって「黙認」とういうより「前提」とされていた という現実を認識すべきなのです。

この点を 正確に理解せず上記のような規制強化を 国に求めるのは措置時代への逆行といわれてもいたしかたありません。介護保険制度は 民間の力で サービスの質と効率の向上を目指す制度です。現在の制度や報酬体系に不備があるからといって 「お上」に規制に求めようとするのは自らを縛ることにほかなりません。

また 彼らの論拠は 中立性を保つためには「囲い込み」を禁止すべきだ ということにあります。しかしよく考えてみてください。ケアマネジメントの焦点は「囲い込みの有無」ではなく その「質」にあるはずです。母体のある・なし といった外形基準だけで ケアマネジメントの質を判断するのは 要支援のベッド・車いす給付禁止といった 官僚のやり口と同じで 乱暴すぎます。

いま求められるべきは 規制強化ではなく「情報開示の徹底」です。第三者評価などの推進を通して 事業所のプランや業務・経営内容の透明性を高めることです。そうすることによって独立型事業所はそのメリットを大いにアピールできるはずです。その結果 利用者の選択権は拡大され 利用本位のサービス提供を進展させることになります。

現状の低い報酬の引き上げを求めることに 異論はありません。しかし 経営者の目線は 利用者に向かっていなくてはなりません。

「利用者第一主義」を念頭においた ケアマネジメントの質や経営力のアップに向けての知恵と工夫が 民間事業の真骨頂ではありませんか。

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