2008年11月号

ウエルビーコラム 2008年11月号

政治の責務は先の見えるシステム構築
3%介護報酬アップをどう評価するか

10月30日麻生太郎首相は 米国発の金融不安による景気減速に対応するための「追加経済対策(「生活対策)」を決定しました。総額2兆円に上る定額給付金の支給が大きな目玉ですが 介護分野においても来年度の介護報酬の3.0%引上げが明示されました。
具体的な内容は 以下の通りです。

 「介護従事者の処遇改善と人材確保等 ・介護報酬改定による介護従事者の処遇改善」
―平成21年度の介護報酬改定(+3.0%)等により介護従事者の処遇改善を図ることとしつ
  つそれに伴う介護保険料の急激な上昇を抑制等・介護人材等の緊急確保対策の実施等
―介護福祉士等修学資金貸付事業の拡充(一定期間従事した場合の返還免除要件の緩
  和等)
―母子家庭の母親の介護福祉士・看護師等の資格取得支援(給付金の支給期間拡大)
―福祉・介護人材の参入促進のための相談・助言 潜在的有資格者等養成支援 複数事
  業所連携(以上障害者基金の活用) 年長フリーター等を介護人材として確保・定着させ
  た事業者への助成 介護作業負担軽減のための設備・機器を導入する事業者へのモデ
  ル奨励金
―認知症高齢者の徘徊SOSネットワークのGPS利用や広域ネットワークの整備推進
―外国人看護師・介護福祉士候補者への日本語研修

介護報酬の引き上げが決定したことは 事業者にとって歓迎すべきことではあるのでしょうが釈然としないものがあります。3%という上げ幅が妥当かどうかということもそうですが(この上げ幅では2000年当初と比べてもマイナス1.78%となる) なにより報酬アップが「政治的な道具として利用されたにすぎないのではないか」という疑念が残ることです。
世界的な金融不安が発生する以前から 現状の介護報酬や職員処遇の問題については改善が必至の状況だったはずです。介護報酬アップをあえて追加経済対策として掲げたことに違和感を覚えざるをません。
また 賃金配分という個別経営にかかわる問題に 国が介入できるかどうかについても疑問があります。

事業者として望むのは 3年に1回行われる報酬改定の仕組みそのものの見直しです。経営実態調査の結果「黒字が出ればマイナス改定」というこれまでのルール自体が理不尽です。保険料と公費のうえに成り立つ事業だという前提を踏まえたうえで「適正な利益とはどの程度なのか」「収支差という指標が妥当なものなのか」など 今こそ論議すべき点がなおざりにされています。

国民の最大の不安は将来への不安です。介護を含めた社会保障の充実と安定的な運用が最大の景気対策となるはずです。目先の対応ではなく 先を見通せる透明な論議とシステムの構築を最優先にすることが政治の責務ではないでしょうか。

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