2008年10月号
ウエルビーコラム 2008年10月号
既得権益を越えた国民目線でビジョンを示せ
再開された介護報酬改定議論に望むもの
いよいよ 来年4月の介護報酬改定に向けた議論が本格的に開始されました。 18日から始まった社会保障審議会介護給付費分科会にも はじめて民間の在宅介護事業者団体の代表が選出され ヒアリングの対象も拡大されるなど 事業者の意見を広く求める姿勢はうかがえます。
厳しい事業環境を反映して 各団体からは 一斉に介護報酬引き上げに向けた要望があがっています。
・特定施設のグループホームに比べて低い報酬の改善
・グループホームがの1ユニットでも健全に経営できる報酬への配慮
・新型特養の2:1の職員配置基準に対する報酬設定
・小規模多機能の給付費を支給限度外へ
・福祉用具の病院・特養などでの貸与
などなど
いずれも なるほどとうなずける要求がほとんどです。
しかし これらが業界や団体の陳情合戦に終わってしまわないか懸念が残ります。
事業と事業者の未来は 社会と国民の豊かな将来像があってはじめて見えてくるものであるはずです。単に 業界の既得権の保護や拡大としか聞こえない要求は 政府はおろか顧客や市場からも支持を得ることはできないでしょう。
この9月に終わった特養の「重度化対応加算」や特定施設の「夜間看護体制加算」の(准看護師でも加算可能とする)経過措置についても 顧客視点での議論というより 看護師団体の職域の保護という観点でしか決着をみなかったという印象が強く残りました。
また 全国保険医団体連合会(保団連)の「2009年介護報酬改定に対する要求」の中にある 「コムスン事件」を理由とする「営利法人による訪問看護事業所の開設禁止」などにも首を傾げざるを得ません。
私たちは 官僚や一部業界への手厚い保護や過剰な政府の介入が 国民の支持を失っていることを忘れてはなりません。 新しい時代や社会の担い手であるべき介護事業が発展するためには 旧来の利益誘導のみをめざした政治的手法は忌避されるべきです。 結果のためには手段を選ばないという前時代的な姿勢は 国民市場の中で成長・発展するべき生活支援サービスの未来を 自ら閉ざしてしまうことになります。
「新しい酒を盛るための新しい皮袋(=ビジョンと方法論)」をかざした 堂々たる議論を切に望みます。