2007年12月号
ウエルビーコラム 2007年12月号
混合診療解禁は「金持ち優遇策」か?!
官僚の既得権確保の論理に惑わされるな
11月7日東京地裁は がん患者の清郷伸人さんが国を相手取って起こした「健康保険が使える診療(保険診療)と保険外の診療(自由診療)を併用する『混合診療』を受けた場合 保険診療分も含めて全額患者負担になるのは不当だ」とした訴訟で 国側敗訴の判決を言い渡しました。 「混合診療を禁止する法的な根拠はない」と 原告に保険の受給権があることを認めたものです。
国側は「健康保険法で保険の適用が認められているのは 国が安全性や有効性を確認した医療行為。自由診療と組み合わせた診療は保険診療とは見なせない」などと主張していますが。判決は「保険を適用するかどうかは個別の診療行為ごとに判断すべきで 自由診療と併用したからといって本来保険が使える診療の分まで自己負担になるという解釈はできない」と国の法解釈の誤りを指摘しました。ただし 判決では「法解釈の問題と 混合診療全体のあり方の問題とは次元の異なる問題」と 混合診療の全面解禁の是非については踏み込んでいません。
混合診療全面解禁反対論者の最大の論拠は「混合診療を解禁すれば 所得により受けられる医療に格差が生じる。金持ち優遇で不公平」というものです。
しかし現在は 保険対象外の最新治療を受けようとすると それ以外の保険診療も保険対象外とされてしまいます。 わらにもすがる思いで新しい治療法にトライする人たちに 大きな経済的負担を強いることにほかなりません。混合診療を認めないことのほうが 金持ち優遇といえます。
厚生労働省が反対する理由は 自らの既得権益確保という 官僚の論理にすぎません。ひるがえって 介護においては「混合介護」が可能な制度設計がなされているにもかかわらず 保険外(相対)サービスが伸び悩んでいるのは 行政の不当な規制です。
国民・受益者のニーズにかなった規制改革を われわれが声をあげて押しすすめていかんくてはなりません。