2007年4月号
ウエルビーコラム 2007年4月号
外圧が原因で事業は失敗しない!
改革の時代の経営者とは
訪問介護サービスのトップ企業コムスンを擁するグッドウィル・グループは 2006年12月中間連結決算で経常利益が前年同期比30%減の23億円 2007年6月期の連結最終損益も300億円の赤字(前期は34億円の黒字)になる見通しだと発表しました。
最大の原因は「コムスンが手掛ける訪問介護が 昨年の介護保険制度改正で客単価が下がり採算が悪化したこと」だとしています。
折口雅博会長は記者会見で「『訪問介護のビジネスモデルは崩れた。今後は施設介護に注力する』との方針を示した」と 日本経済新聞は伝えています。
2月の月刊コラム「先行き危ぶむ介護事業者!」の内容を地で行くようなニュースです。
これまで訪問介護が大きく伸びてきた要因は
①設備投資がほとんど必要ないため低コストの事業運営が可能だったこと
②顧客の大多数が要介護度の低い層で サービスの中心が食事や掃除などの家事援助であったため 専門性の低い登録ヘルパーによってサービス提供が可能だったこと
にあります。
確かに旧来型の「訪問介護一辺倒モデル」は終焉を迎え 中重度にも対応できる「複合事業モデル」へと ビジネスモデルは変容していく過程にあります。
しかし 業績悪化の理由を「介護保険制度改正」の一言で済ませていいのでしょうか。
また「施設介護」が将来を見据えた戦略の中心になるのでしょうか。
吉野家の安部修仁社長は 最近の講演で次のように述べています。
「外部からの攻撃とか外圧 外側からのエネルギーとか圧力は 内側が結束のエネルギーを高めるための触媒にはなっても それで壊れるようなことは本当はない。外側からの攻撃や圧力が作用して 結果的に内側が壊れることはあるかもしれない。けれども その場合に内側が崩れるのは 外側からの圧力に『方策がない』『据えるべき課題がない』『課題の共有がない』というときです」
ご存知のように吉野家は「1980年の倒産」と「BSE問題による2年半にわたる牛丼の販売休止」という2度の地獄を経験し そこから復活してきた企業です。
外食と介護事業という業種の違いを超えた「真理」がここにあります。
「走りながら考える」介護保険制度は「時代の要請にしたがってたゆまぬ改革が続けられる」という宿命にあります。しかしこの時代 どの事業も同じ課題のもとで 日々革新のためのチャレンジを続けているのです。
いま経営者に求められるのは「社会・制度を先取りする」そして「課題を見つけ目標を設定する」力なのです。