2011年9月号
ウエルビーコラム 2011年9月号
事業者が示すべきニーズとは
数頼みではなく課題解決の道筋を
さきの第78回社会保障審議会介護給付費分科会で栃本一三郎・上智大学総合人間科学部長が座長となってまとめた「特別養護老人ホームにおける入所申込の実態に関する調査研究」の結果概要の説明がありました。
調査によれば
○2009年度の厚生労働省の全国調査によれば入所申込者数42.1万人とされたが ただちに入所が必要だが入所できない人は4万人
○在宅介護に困難を感じる人に対しては 特養入所に限定しない選択肢が用意されるべき
と説明されました。
42万人超と喧伝されてきた待機者は「過剰なニーズ」といえるでしょう。
4万人という数字も決して簡単に解消できるものではないと思われますが それ以外の人を救済する選択肢こそが「地域包括ケア」であるはずです。
先月末講師として参加した長野県小諸市・佐久市で開催された地域ケア研修会では その地域包括ケアがテーマでした。 参加者から「市町村の関与が強まる法改正後は事業展開のためには確実なニーズがあることを訴えていかなくてはならないのが悩み」という発言がありました。
被災地において特例的に認められた「訪問看護の一人開業」についても 基準該当サービスとされたために「ニーズがない」として ただの一例も認められていないのも同じ構図です。
同研修会で 宅幼老所を運営していた経営者が「1人の利用者が現状では支えきれなくなり老健に入所した。その人のために小規模な住まいをつくり1年後に老健から迎え入れることができた」という実例を発表してくれました。
これがまさに 専門家・事業者としてニーズを発掘し 利用者・家族の望む生活を実現させたということでしょう。
私たちが示すべき「ニーズ」は単なる数字の多寡ではありません。
入所施設に頼らず 顧客の思いと希望に合致した新たな生活を 住み慣れた地域で継続・再建できるという真実を理解させていくことこそが求められます。