2011年1月号
ウエルビーコラム 2011年1月号
「低負担」の国の形を見直し未来を創る!
「先例なき時代」に立ち向かう覚悟
新年おめでとうございます。
今年は この国の未来が明るいものになるのかどうかの大きな岐路となる年のような気がしてなりません。
昨年1月の本コラムでは「新成長戦略は『新味がない』か?」というタイトルで 2009年末に政府がまとめた「新成長戦略」に対する主要マスコミの紋切り型の論評をとりあげました。
「介護事業が経済成長に寄与できる産業」という意味を理解できないメディアの不勉強・不見識を批判しました。
さて1年後の今日 介護事業のあり方はどうなったのかを検証してみると 残念ながら 経済成長に寄与することはおろか 自らの存在意義や存在基盤までが揺らぎかねないといった状態です。
同コラムでは「国民負担を伴う財源問題についても明らかにすべきである」とも書きましたが ご承知のとおり社会保障審議会介護保険部会の意見書は「両論併記」でお茶を濁すことになりました(山崎泰彦部会長の異例の閉会コメントは先月のコラムで紹介しました)。
続く社会保障審議会介護給付費分科会(12/24)でも「次の介護報酬改定はゼロサムかマイナスサムしかないということだ」という発言まで飛び出しています。
2015年の次期法改正・報酬改定まで あるいは来る総選挙まで「棚上げ」することで この国はどうなってしまうのでしょうか。
日本の国民負担率(租税負担の国民所得に対する比率である租税負担率と年金や医療・介護保険などの社会保障負担の国民所得に対する比率である社会保障負担率との合計)が極端に低いことをご存知の方も少なくないはずです。
対GDP比で 日本より国民負担率の低い国は OECD(経済協力開発機構)加盟30か国中 韓国・トルコ・メキシコのわずか3か国(2006年)にしかすぎません。
社会保障には 高所得者から低所得者への所得の再分配機能と生活不安を解消して貯蓄を削減させる機能があります。
言い換えれば 社会保障の充実には「消費性向を高める経済政策」(権丈善一慶應義塾大学商学部教授)という側面があるのです。
1日手を打つのが遅れれば 日本の根源的な課題である少子高齢化と財政・経済の悪化がその分進行していくのは自明の理です。
躊躇する余裕などこの国はないといっても過言ではないでしょう。
同じく昨年1月のコラムで述べたように それぞれ「専門家が未来を拓く」という覚悟で「先例なき時代」(日本経済新聞)に立ち向かうしか残された道はありません。