2009年6月号
ウエルビーコラム 2009年6月号
マネジメント力が人と社会を幸せにする
「日本でいちばん大切にしたい会社」から学ぶこと
先日 ロングセラーとなっている『日本でいちばん大切にしたい会社』でもとりあげられた 日本理化学工業の大山泰弘会長のお話を聞き機会がありました。
日本理化学工業は 従業員の約70%が知的障害者。
さらにその半数以上が重度障害者です。
50年前「就職が無理ならせめて働く喜びだけでも体験させてあげたい」という養護学校教師の熱心な依頼により実現した 知的障害をもつ15歳の少女2名の2週間の職業体験。その終了時 全従業員による大山氏への雇用懇願でかなった就職。そこから現在の重度障害者多数雇用事業所への足跡は つとに知られているところです。
同社と大山会長の取り組みは 敬服に値するものであることは言を待ちません。
しかし これが単なる「美談」であるなら これほどまでに多くの企業経営者の心を揺さぶることはなかったはずです。
中小企業とはいえ 日本理化学工業がチョーク製造シェアの30%を超すトップ企業であり 商品開発や品質・生産性・管理面で高い評価を得ていることがその大きな一因です。 企業は 利益を生むことで社会貢献をしています。
そのうえに 障害者の雇用を創出し さらに「お世話される存在」を「人から必要とされる存在」へ導き 人間の普遍的な価値を実践として証明した点に より大きな貢献があります。
同社は 障害者を戦力としてフル稼働させるために さまざまな知恵と工夫を生み出してきました。 それを可能にしたのは まぎれもなくマネジメントの力が備わっていたからです。
福祉の世界では 授産や就労移行のため さまざまな試みが「専門性」の名のもとのに行われています。 しかし そこに欠けているものが ここにあったのです。
企業や組織を発展させるための不可欠な要素として「人」を考え それを活かすための日常的なプロセスのなかで「ノーマライゼーション」や「ユニバーサル」が 概念ではなく 実体として示されています。
介護や福祉を「業」として営んでいる私たちこそ 虚心坦懐に学ぶべきなのではないでしょうか。