2014年5月号
ウエルビーコラム 2014年5月号
処遇改善加算継続は既定の路線!?
自立した産業に脱皮するために
いよいよ来年度の介護報酬改定に向けての議論が社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長:田中滋慶応義塾大学名誉教授)でスタートしました。
100回目に当たる4月28日の分科会では 議論の進め方・スケジュールが提示され 夏頃までに総論 秋から 12月にかけて各論を審議し中旬には 介護報酬および基準に関する其本的な考え方の整理・取りまとめを行い 翌1月には介護報酬改定案の諮問・答申を行うことが確認されました。
この日はフリートーキングで 各委員からは自由な意見が述べられました。
期せずして 複数の委員が言及したのは「介護職員処遇改善加算」についてでした。
多くの委員が この加算の継続を望む意見を述べました。
人材確保に苦慮する現場の正直な思いはよく理解できます。
しかし 2012年報酬改定に向けての同分科会の審議内容を知る者には もろ手を挙げて賛成とは言えません。
「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告」には「(介護職員処遇改善加算は)例外的かつ経過的な取扱いとして設ける」と明記されています。
これは当時あった「介護職員処遇改善交付金」を本体報酬に組み入れるかどうかの議論中で「加算」という決着を見た結果です。
2011年11月24日に開催された第86回同分科会では 冒頭田中滋委員が「処遇改善交付金を本体報酬に取り入れるとして それを加算とし支給対象や支給方法を細かく縛る案には強く反対します。介護保険の目的は措置からの脱却でした。収入の使い道を事細かに決めて それを公的に監視するような体制は非効率なシステム管理費用の上昇を招きます。働く人同士の連帯や働く方を縛る非近代的な状態の後戻り案になりかねません」と意見を述べました。
これに続いて「賃金の配分について国家が介入するというのはおかしい」「国家が経営に参画するということは共産主義に入りかけたのかと思われかねない」「労使間で処遇改善に資する方向で改善を図る。事業主が職員をきちんと評価しないと職員は現場を去っていく。去っていく施設はサービスは将来的に廃れていく」という意見が続きました。
交付金の継続を主張した委員もいましたが 議論の大勢は報酬に組み入れるという筋論でまとまりました。
もちろん3年たった現在 当時とは経済・社会情勢は変化しています。 3年前に決まったことを何が何でも墨守すべしとは思いません。
しかし 介護事業や介護保険のあり方を真摯に審議した結果を「苦しいから」の一言で反故にしていいとは思えません。
介護事業が産業として自立し 働く者が誇りを持って生きがいを感じることができなければ 現状を変えることはできないでしょう。
前を向いた議論が積み重なることを期待してやみません。
株式会社ウエルビー
代表取締役 青木正人