2015年12月号

ウエルビーコラム 2015年12月号

因果律を超えた課題への取組を
危機感を煽るだけやモグラたたきは通用しない

PRESIDENT社のウェブで「格差拡大! 2030年地域別 医療&介護『崩壊危機レベルマップ』」という おどろおどろしいタイトルの記事がアップされました。
「東京23区では介護難民が深刻化」し「三大都市圏について 余裕のある地域は限られて」おり「医師不足では 後期高齢者の増加率を当てはめると 最悪となったのは埼玉県春日部市・草加市及び周辺部の250% 続いて千葉市の246%など 首都圏のベッドタウンが最も危険な状態に陥ることが予想されている」としています。

さらに「介護難民は首都圏でほぼ全域が絶望的な状況」で「2010年の高齢者向け住居数(老人保健施設・特別養護老人ホーム・介護療養型医療施設など)を基準に 2030年の75歳以上の人口推計との比較で評価すると 2010年の全国平均は 後期高齢者1000人に対し住居数の平均は約120床。2030年時の推計で最悪となった新宿区・中野区・杉並区は 1000人に対しわずか37床」だと述べています。

赤色がレベル5・赤橙色がレベル4・橙色がレベル3・紫色がレベル2・青色がレベル1

よく読むと この記事は 国際医療福祉大学の高橋泰教授の分析を紹介した「PRESIDENT」 2014年10月13日号だということがわかります。
昨年話題となった日本創成会議の「消滅可能性都市」のもとになったデータです。
このデータは 高橋教授自らが認めているように 施設・居住系サービスに依拠したもので 在宅サービスの可能性がほとんど加味されていません。
これと同じように見えてくるのが さきごろ発表された「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」の「『介護離職ゼロ』に直結する緊急対策」の組み立てです

介護離職をなくすための具体策の第一は 特別養護老人ホームの入所待機者の解消を目的とした 社会福祉法人だけを対象とした国有地の賃料を半額にするという方針です。
家族の介護のために働き続けられなくなる人がいるから 介護が必要な家族を施設に入れればいい。
そうすれば「名目GDP600兆円」が実現できる。
なんと牧歌的な政策なのでしょう。

同じ政策提言でも「保健医療2035」では「住まい・地域づくり・働き方と調和しながら『社会 システム』として機能するため これまでの保健医療制度を規定してきた価値規範や原理 すなわち『パラダイム』を根本的に転換すべきである」と謳っています。

私たちが直面しているのは「前世紀までは通用したかもしれない 単純な『因果律』で解決される課題ではない」ことは すでに多くの人々が理解あるいは認知しているのです。

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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