2016年3月号
ウエルビーコラム 2016年3月号
希望の見える社会を生み出すものは
地域のダイナミズムを取り戻す
先日 医療経済・政策の研究者の二木立・日本福祉大学学長のお話を聞く機会を得ました。
徹底した根拠に基づく事実認識と将来予測は いつも傾聴に値する内容です。
たとえば「地域包括ケアシステム」の受け止め方に大きな差が出る原因のひとつが この言葉の命名者と行政の目指したモデルが異なっているからだ という指摘には なるほどと納得させられました。
命名したのは公立みつぎ総合病院の山口昇院長ですが 当時の厚生労働省が想定していたのは尾道方式だったというわけです。
さらに二木氏は 地域包括ケアの実態は「ネットワーク」で「システム」ではないと述べています。
システムは国が法律またはそれに基づく通知等により全国一律の基準を作成するものだが 地域包括ケアの目指すものは各地域で自主的に取り組むネットワークだとしています。
たしかに お上が上意下達で金太郎飴のような仕組みをつくるのが地域包括ケアの本旨ではないという趣旨には賛同します。
しかし 私はこれから必要なのは「地域包括ネットワーク」だというふうには理解していません。
もちろん 二木氏もそう述べているわけではありません。
ネットワークは 地域包括ケアに欠かせない基盤です。
けれどもネットワークや顔の見える関係ができれば地域包括ケアが実現するというふうに誤解されることに 一縷の危惧を感じます。
地域包括ケア「システム」は 地域包括ケア「制度」ではありません。
全国一律の「固定的」な制度ではなく 地域の実情にあわせた「ダイナミック」な関係性と活動の連鎖が地域包括ケアの姿だと考えています。
私たちが希望の見える社会を実現していくためには あらゆるシーンでダイナミズムを取り戻し・生み出していくことが必要なのです。
株式会社ウエルビー
代表取締役 青木正人