2003年12月号

ウエルビーコラム 2003年12月号

年金制度改革の先にあるものは
新しい価値観の上に成り立つ介護事業

2004年に向けて 年金改革の議論が活発になっています。

政府・与党は 厚生年金の保険料率(現在は13.5%)の上限について 厚生労働省案の20%よりも下げ 18%程度に抑える方向で調整に入っているようです。上限20%では将来の給付水準は54.7%になるのに対し 上限を18%にすれば給付水準は49.5%となり 政府の約束する給付水準50%を維持するのは困難になります。しかし いずれの案が採用されるにしても 雇用者と経営者の負担が増大することになります。

さらに 週の労働時間が20時間以上の雇用者に対する厚生年金の適用拡大も実施されることになれば 介護事業の経営に大きな影響をもたらします。

ことは年金だけにとどまりません。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は 介護サービスにかかる費用の利用者負担を現在の1割から2~3割まで引き上げるよう提言しています。これらはいずれも 介護事業に携わるものにとってゆるがせにできない大きな問題です。

しかし これらの問題を目先の事業収益のみにおいて判断することは あまりにも短絡的です。年金や保険を含めた これからの社会保障はどうあるべきかという視点でとらえることが必要です。さらにいえば これからの日本の社会や経済がどういう姿になっていくのか 幸せな社会・豊かな社会とはどんな社会なのかを考えていくということではないでしょうか。

なぜならば ひとつには 私たち自身が負担と給付の主体にほかなならないということがあります。

またさらに 介護事業経営の視点からいっても 持続可能な社会保障制度のなかで 利用者のニーズに応えうるものであるかどうかが 産業として定着・発展できるかどうかの大きな鍵にほかならないからです。

広井良典氏は『定常型社会-日本の社会保障』(岩波新書2001年)の中で つぎのような提言を行っています。
●少子高齢化が進展するこれからの日本では 経済成長率が落ちることを「生きていくスピードをちょっとゆるめること」だと認識すれば むしろ歓迎すべきではないか。
●現在の「年金重点型」の社会保障から「医療・福祉重点型」に再編すべきではないか。

介護事業は 単にサービス業の一形態にとどまるものではなく 新しい価値観をベースにした豊かな日本のインフラとなる使命があるのです。

年末・年始のお休みに 日本と事業そして自分自身の将来を重ね合わせ考える時間をおつくりになってはいかがでしょうか。

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