2006年3月号

ウエルビーコラム 2006年3月号

新たな負担かアピールのチャンスか!?
「介護サービス情報の公表」をどう活かすか

改正介護保険法に基づいて「介護サービス情報の公表」制度が動き始めました。弊社もすでに調査員養成研修を修了し 東京都の調査機関として指定される予定です。

対象となるのは 介護保険のすべての指定サービスとされていますが 2006年度の対象サービスは 訪問介護・訪問入浴・訪問看護・通所介護・特定施設(有料老人ホーム・ケアハウス)・福祉用具貸与・居宅介護支援・特養・老健の9サービスです。また 訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション・介護療養型医療施設・認知症対応型共同生活介護(これによって現行のグループホームの外部評価は 近い将来的この制度に統合されることになるはずです)は 07年度から開始される予定です。

調査諸経費は介護報酬に含まれているとの考え方から 事業所が費用負担することになります。具体的な費用額や徴収方法については 都道府県が条例で定めることなっており 5~6万円程度の自治体が多いようです。すべての事業所に課せられた義務ですが 介護サービスの対価として支払いを受けた金額が 1年間で100万円以下の事業者は対象外とされています。

公表される情報は 事業者が記入する「基本情報項目」と 調査員(2名1組)が事実確認をする「調査情報項目」(原則1日)の二本建てになっています。公表はインターネット上での開示されるほか 事業所内での掲示・重要事項説明書への添付等が求められます。公表の頻度は新たにサービスの提供を開始する時とその後は毎年1回です。

目的は「利用者の選択に資する」ことです。これまで実施されてきた第三者評価制度との違いは「評価」はしないという点です。調査員は 事業所が公表した情報のうち客観的事実内容の確認が必要な事項を確認するというものです。具体的には 調査情報項目として掲げられている「記録」「マニュアル」「研修(計画・実施記録)」などが「あるかないか」を確認するだけです。例えば マニュアルは事業者が作成したものでなく市販のものでも「ある」と判断されます。経営内容やサービスの質の良し悪しを「判断」したり「改善指導」を行うことはありません。

公表情報の内容の責任は 調査者や都道府県にあるのではなく 事業者自身にあるという考え方に立って組み立てられている制度です。公表された内容を評価するのも 調査者や都道府県ではなく 利用者自身に委ねられています。

また 義務ではあっても「指導監査」のように 指定基準等にかなっているか(最低基準を満たしているか)どうかをチェックするものでもありません。ただし 法律で規定された義務的な情報公開制度ですから この義務に違反(公表しない・虚偽報告をするなど)すると 指定取り消しを含む処分の対象となります。

事業者・経営者は このような点を正確に把握・理解して 新制度に取り組む必要があります。多くの課題を抱えた制度ではありますが 監査的感覚で「やらされるから仕方がない」「うまくやりすごうそう」と思っているようでは 淘汰される側に回ってしまうでしょう。 大切な視点は 次の2つです。

ひとつは 利用者・顧客に「自社をアピールできる広報手段」として積極的にとらえること。 もう1点は これを契機に「自社のマネジメントを改善して強い組織をつくる」「サービスを標準化して質を高める」という 積極的な姿勢を事業所全体で共有すること です。

経営者の考え方・哲学が 真に問われる時代の始まりです。

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