2007年1月号
ウエルビーコラム 2007年1月号
加速する少子高齢化が社会保障・年金を崩壊させる !?
出生率1.26時代のリスクとチャンス
新年 おめでとうございます。昨年は 介護保険法改正の大波に揺れた一年でしたが 今年は どんな年になるのでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所は 2055年までの人口変動を予測する「日本の将来推計人口」を公表しました。合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数)の50年後の見通しは 2002年の前回推計の飛び抜けてから1.26へと大幅に低下し 総人口は2046年に1億人を割り込みます。2055年には8993万人に減り 65歳以上が人口に占める高齢化率は 今の倍の40.5%になるとしています。世界的も 2004年に国連が予想した主要国の高齢化率と比べると イタリアの35.53%・韓国の34.54%を大きく引き離しています。
少子化が加速した主な要因は 結婚しない女性が増加したことです。1990年生まれの女性の生涯未婚率は ほぼ4人に1人の23.5%と推計されています(前回推計の生涯未婚率(1985年生まれ)は16.8%)。晩婚化も進み 平均初婚年齢は前回より0.4歳遅い28.2歳となっています。 その反面 平均寿命は 2005年には 男性78.53歳・女性85.49歳でしたが 2030年には 男性81.88歳・女性88.66歳。2055年には 男性83.67歳・女性90.34歳まで延びます。 少子高齢化の加速は 社会保障制度とりわけ年金制度を直撃します。日本の社会保障制度は 現役世代が納めた保険料や税金を原資に高齢世代の年金や介護・医療をまかなう仕組みになっています。特に年金は 現役世代の長期の積み立てを前提に制度を設計しているので 現役世代の将来人口が減ると制度が揺らぎかねません。
今回の推計によると 働き手として経済活動の中心となる15~64歳の人口割合は 2005年の66.1%から 2030年には 58.5% 2055年には 現在より4000万人近く減って4600万人になり 51.1%にまで低下します。現在は 働く世代が3人強で1人のお年寄りを支えていますが 2030年には 1.8人で1人を支え 2055年には 1.3人で1人を支えることになります。
政府・与党は2004年の年金改正で 現在の年金を「100年安心の制度」とPRしています。 平均的収入の会社員世帯で現役世代の収入の5割以上の年金給付を100年間保証できるという意味です。しかしこれは 出生率1.39の前回推計を前提に設計したものです。今回の人口推計を当てはめて単純に計算し直すと 20年後には早くも給付水準が50%を割り込んで48%になってしまいます。
政府は「制度を設計した2004年当時より積立金の運用が好転しているので 人口減は運用益拡大でカバーできる。『100年安心』は揺るがない」 と主張しています。安倍首相も 「(出生率は)厳しい数字だが すぐに年金が崩壊するわけではない。制度そのものを変える必要はない」 と強調しています。
しかし 株価が下落すれば運用は悪化します。また 平均寿命が伸びれば給付総額が想定以上に膨らんで積立金が足りなくなることも考えられます。そもそも 今回の1.26の出生率でさえ維持できるかどうかはっきり してはいません。厚生労働省は今回の推計結果を受け 来年1月末にも年金財政への影響の暫定的な試算を公表する予定です。
楽観的な見通しを前提にした今の年金制度の見直しは避けられないでしょう。
また 先月のコラムでも述べたように 介護・医療についても大きな影響を及ぼすことは必至です。
経営者には ますます先を見通す見識が要求されます。
IBMやシティバンク・マイクロソフトなど全米400社以上の有力企業のコンサルタントを務めたカリスマ的なマーケターであるジェイ・エイブラハムは こう言っています。 「ビジネスとはリスクを利益に変える行為である」
みなさまにとって よりよい一年であることをお祈りいたします。