2007年5月号
ウエルビーコラム 2007年5月号
介護・福祉事業の 「見える化」 とは!
現場の力を活かす経営の仕組みづくり
最近 「見える化」 という言葉を頻繁に見聞きするようになりました。もともとは トヨタの生産管理に端を発した言葉です。
その意義は
① 経営上の問題を可視化して特定すること
② 可視化された問題を現場の改善的取組みを通じて解決すること
という点にあります。
弊社では これまでもコンサルティングや第三者評価を実施するにあたって 「見えない領域(内面領域)を理解・把握したうえで 可視領域を評価・改善する」 というスタンスを基本においてきました。なぜなら 介護事業をはじめとするサービス業には 「無形性」「消滅性」 といった固有の特性があるからです。
さてここで コンビニエンス業界における 「見える化」 の事例の2つを比べてみましょう。
(1) 製品の売れ残りや売れ筋製品を把握するために 販売データを重回帰分析やトレンド分析にかけ より高精度な予測を行うシステムを開発すること(2006年11月21日付け日経産業新聞)
(2) 「店の前に置く灰皿の位置」「トイレやバックヤードのあるべき姿」 などを 写真と共に貼り出していくこと(2007年2月26日付け日経流通新聞)
一見すると(1)の事例は 最新のIT技術を駆使した 「見える化」 のように思えますが 基本的発想は POSなどによって古くから取り組まれてきたことです。
それに対して(2)の取組みは 「問題点の洗い出しが 実際に店舗で働くアルバイト店員たちによって徹底的に検討されていた」 さらに 「オーナーが自分は口下手であることを認識しており アルバイト店員の引継ぎに課題を抱えていた」 という背景から生み出されたものだったのです。
ここに 介護・福祉業界にとって必要な「見える化」や「業務標準化」のエッセンスがあります。
① 「見える化」とは 何でもかんでもデータ化すればよいというものではないこと
② 「見える化」によって明らかになった問題の解決方法は自明なものではなく 現場で働く
スタッフの積極的な関与が必要になること
の2点です。
最近 声高に叫ばれている 「マニュアル」 ですが その意義は マニュアルという 「目に見えるツールの存在そのもの」 ではありません。
「マニュアル化」 とは とかく 「職人芸」 的に陥りやすい現場のノウハウ(暗黙知)を 他の誰でも見える形(形式知)変えていく作業のことです。
そして マニュアル化の先にある 「暗黙知を形式知化していく継続的な仕組みづくり」 こそが 「業務の標準化」 であることを 経営者は肝に銘じておくことです。
※本稿は「『見える化』ブームの功罪」(神戸大学経営学研究科準教授松嶋登氏・2007年)を参考とさせていただきました。