2007年6月号

ウエルビーコラム 2007年6月号

人手不足を嘆く前に
正社員化しか出口はないのか!?

景気の拡大傾向が強まる中 産業界では懸念される人手不足に対応するため さまざまな試みが始まっています。 バブル経済の崩壊以降これまで 非正社員の比率は上昇を続け 働く人の3人に1人まで非正社員が増加するに至りましたが  大手企業は優秀な人材をいち早く囲い込もうと 非正社員の待遇改善を加速させています。 ユニクロは パートと契約社員の「大量正社員化」に踏み切りました。

一方 携帯電話やメールを使ってそのつど人を集める「日雇い派遣」で急成長してきた「フルキャスト」や「グッドウィル」(コムスンの親会社)では 労働条件の向上を求めて 相次いで労働組合が誕生しています。「ネットカフェ難民」に代表されるように 非正社員の中でも格差が広がり二極化が進行していることがうかがえます。

福祉・介護の業界でも 人材確保は喫緊の課題で 社会保障審議会福祉部会では「人材確保指針の見直し」が現在進行中です。
5月30日の同審議会では 指針の見直しのための「議論のたたき台」が示されました。
 ① 現に従事している者の定着の促進
 ② 離職者等の再就労の促進
 ③ 多様な人材の参入の促進
の3つの観点から 措置を講ずるとしています。
具体的には 「労働環境の改善」「キャリアアップの仕組みの構築」「新たな経営モデルの構築」「潜在的有資格者の掘り起こし」「退職した高齢者等の参画促進」などが掲げられています。キャリアパスの重要性は 3月号のコラムでも述べたとおりですが 国の施策待ちでは 遅れをとることは必至でしょう。

冒頭の大手企業のような極端な正社員化は 介護や福祉の業界事情を鑑みると たとえ介護報酬のアップが実現したとしても きわめてリスキーといえます。
労働環境の改善は経営者の責務ですが 被雇用者の就労意識の多様化も考慮すれば すべてが正社員でなくても実現は可能です。 なにより経営者自身がリーダーシップを発揮することが 困難な現状を打開する最大のポイントです。

大前研一氏(かつて日立製作所在籍)の次の発言をかみ締めてみましょう。
「日立の最終赤字は2000億円という巨額である。…日立に起こっていることは 他の会社にとってもよいケーススタディになる。…同社の社員は優秀で 当時博士号を持つドクターだけでも3000人以上いた。…それなのに2000億円もの赤字を出した。これが何を示しているか。21世紀は『従来型の優秀な人材をたくさん集めても駄目だ』ということにほかならない。 なぜ日立がこんな体たらくなのか。それは優秀な社員はたくさんいても優れた経営者がいないからだ。しっかり経営できるものがトップにいないから 皆がバラバラな方向に努力して 会社としては利益を上げられない。日立の例からは 優秀な社員をたくさん抱えるよりも、数人の優秀な経営者が必要ということを学ぶことができる」

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