2008年3月号
ウエルビーコラム 2008年3月号
「サービス」を越えた「おもてなし」を
日本発の最先端事業誕生の萌芽
1月号のコラムで「介護事業は 21世紀の新しい価値を創造する可能性を秘めた事業だ」と述べました。また別稿でも「わが国の介護事業には 海外へも進出できる可能性を感じる」とも述べました。 では 北欧に勝る日本型の介護事業とは どのようなものなのでしょうか。
多摩大学大学院教授の田坂広志氏は「おもてなし」について 次のように語っています。
わが国における 本来の「おもてなし」の精神とは 操作主義や営利主義とは対極にある。
それは茶道に由来し 茶道の根底には「主客一体」というの禅の思想が宿っている。「主客分離」を前提とした欧米的な「サービス」の精神とはまったく異なった思想である。
もうひとつ大切なのは「一期一会」の思想である。これも安易に語られることが多い言葉だが本来は「ただ一度の出会いと覚悟し そのひと時を 思いを込め 心を込めて過ごす覚悟」のことをいう。我々が その覚悟を本当につかみみたいなら 人生の無常観や死生観をつかむことが求められる。
それゆえ「おもてなし」の精神とは 人間としての探い精神的修養によって身につけられるものであり ビジネスの世界で「おもてなし」を語るということは「日々の仕事を通じて己を磨く」という日常的な思想を真摯に行じることを意味している。
これからの情報革命の進展と資本主義の進化の中で この日本的な思想が 新たな意味をもって復活してくるはずだ。なぜなら「おもてなし」の精神が重視される背景には 資本主義の最先端における「ボランタリー経済」の復活と拡大があるからだ。
「主客一体」「一期一会」そして「生死観」は 介護の世界を語るうえで 欠かせない大切な要素です。介護事業=生活支援事業とは「おもてなし」本来の精神が生かされるボランタリー的な要素の強い経済行為そのものであるといえるでしょう。
このような観点から介護を進化させていくことに 北欧の単純サービス型の介護を越えた 日本発の新しい時代のサービスや経済価値が誕生させる 大きな手がかりがあるのではないでしょうか。