2009年3月号

ウエルビーコラム 2009年3月号

「散歩同行」をめぐる自治体の不見識
「老計10号」にとらわれずケアはできる

訪問介護員の「散歩の同行」が迷走しています。 発端は 厚生労働省が昨年12月に示した
「ヘルパーの散歩同行」についての見解の変更です。

第170回国会で 参議院議員の大河原雅子氏の「訪問介護員による『散歩』の支援が認められていない現状について 具体的な見解を示せ」という「質問主意書」に対して「訪問介護員による散歩の同行については 適切なケアマネジメントに基づき 自立支援・日常生活活動の向上の観点から 安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては 利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから 現行制度においても 介護報酬の算定は可能である」という麻生太郎・内閣総理大臣の答弁書が示されました。

これまでは 「老計10号」を根拠に 訪問介護員が可能なのは 通院介助と乗降介助・買い物同行だけとされていました。 これまで全国の自治体が禁止していた「ヘルパーの散歩同行」を 政府が認めたのです。 「見解の変更か」という問い対して 厚生労働省は「通達(老計10号)で示したのはあくまで例示であり それ以外は認めないと言ったことはない」と回答しています。

しかし現実には この方針に従わない多くの自治体があります。 厚生労働省の豹変振りに対する自治体の反発も理解はできますが 政府の公式見解に異を唱えるいくつかの自治体の姿勢は容認できるものではありません。 なかには「厚生労働省からの通知や連絡がないから認められない」としている自治体さえもあります。

首相答弁というのは 法令でもない通知より軽いものではありません。これは正式な政府見解であり 答弁を作成したのは厚生労働省なのですから これを無視する自治体は 法治主義を逸脱しています。 東京都介護支援専門員研究協議会が発表した「介護保険制度における『散歩』の同行に関する緊急報告」をはじめ いくつかの職能団体が声を挙げています。 顧客である利用者の利益を考えれば 事業者は 誤った行政指導に唯々諾々と従うべきではありません。

さらに 厚生労働省が「『老計10号』ではあくまで例示で それ以外にも訪問介護員による適切な支援は認められる」としてのは 大きな朗報です。 社会と顧客のニーズに適う支援は 正々堂々実施することが可能になったといえるのです。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

  • URLをコピーしました!
目次