2009年4月号

ウエルビーコラム 2009年4月号

事業者・自治体・国は共犯
無届けホーム火災が露呈させた矛盾と課題

群馬県渋川市で10名の死者を出した無届け有料老人ホーム火災を受け 厚生労働省老健局振興課は 各自治体に向けて 「未」届けの有料老人ホームの届け出促進と 防火安全体制などの緊急点検を求める通知を行いました。 この災害は 単に消防法や建築基準法の防災上の問題として片づけられものではありません。

・老人福祉法の改正に伴って有料老人ホームとみなされる居住施設の問題
・各自治体が実施している「総量規制」の問題
・生活保護受給者の問題  等々 
「高齢者」や「福祉」を取り巻くさまざまな課題が折り重なって生じた いわば「人災」といっても過言ではないでしょう。

要介護の生活保護者を対象とする高齢者住宅の問題については 昨年の12月11日の毎日新聞の報道「高齢者住宅 生活保護者を金銭仲介 1人30万円 都内から9人」や NHKのクローズアップ現代が2月3日に放映した「介護つき住宅の落とし穴」 でも 取り上げられてきました。

入居者を送り出した住民票のある東京都内の自治体(いくら過大な生活保護受給者や過小な高齢者住宅整備を言い訳にしようが)も これら住宅の実態を認識していた受け入れ地の自治体も 「加害者」と指弾されても いたしかたありません。
国も 2005年の「2015年高齢者介護」の報告書以来 昨年の「社会保障国民会議」や「安心と希望の介護ビジョン」そして本年答申された国土交通省の「高齢者が安心して暮らし続けることができる住宅政策のあり方について」にいたるまで 繰り返し「ケア付住宅の整備」を唱えていますが なんら実効性のある施策を打ち出すにはいたっていません。

「規制を強化しさえすれば解決できる」といった短絡的な思考では 解決の糸口は見出せません。
献身的な活動を続けてきた宅老所に代表される「良心的な事業者」と負のビジネスモデルを成立させた「悪徳業者」とは 規制の観点からは なんら差異はないのですから。
制度の隙間を埋める努力こそが 民間事業者の活力であり 国民生活の向上や社会の矛盾解決に寄与してきたことは まぎれもない事実です。

いまこそ 事業者・国・自治体が 顧客(生活者)視点から認識を共有して 国民の利益に資する「ビジネスモデル」の構築に向け 知恵を出し 汗をかくときです。

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