2009年12月号
ウエルビーコラム 2009年12月号
理念のない判断は国益を損なう
「事業仕分け」の功罪
鳩山内閣の目玉施策「行政刷新会議」による「事業仕分け」が 11月27日終了しました。
「仕分け人」(ワーキンググループの評価者)が 9日間に約450事業を検討しました。
このうち厚生労働省の事業は約50事業。医療や介護・障害者福祉関連の事業は約20事業でした。介護関連の仕分け結果は 次の通りです。
介護予防事業;予算縮減 2010年度予算で200億円の要求。仕分け人の多くが「介護給付費の削減にどれだけ役立つのか科学的根拠が示されていない」などとデータ収集が不十分だと反発。要求額を「縮減」するよう求め 削減率は「判定不能」としました。
介護サービス適正実施指導事業など;予算縮減 2008年度の当初予算4億7千万円のうち執行されたのが1億5千万円にとどまるなど 未執行分の多さが指摘されました。国は関与せず 研修内容も含めて各自治体に任せるべきだと判定されました。介護支援専門員の資格更新などの際に行われる研修も 未執行の予算が多く 要求の33億円を半減し 研修内容を改善するよう求めています。
福祉医療機構 ; 基金を国庫に返納 2008年度は計30億円を支出。仕分け人は「基金の運用益だと財務省の査定がない。毎年度 一般会計から支出する形に変えた方がよい」などと指摘して「見直し」と判定。基金全額の2,787億円をいったん国庫に返納するよう求めました。
この試みは メディアにも連日取り上げられたこともあって 国民の関心も高く 予算決定のプロセスを可視化するというもくろみは 総論としては成功といってもいいでしょう。
しかし わずかな時間で事業の意義を理解し 判断を下すというのはあまりに乱暴。
「はじめに削減ありき」の政治的パフォーマンスといわれても仕方がありません。
なにより 根本となる政策の妥当性までは議論の対象となっていないため 事業予算のカットはできても 国益に反する判断を示しなねないという危険が大きいといえます。
たとえば 新政権が 「中負担中福祉」を標榜するなら 増税を視野に入れた議論も 避けては通れないはずです。
「官・予算要求=悪」「民・予算削減=善」という 「水戸黄門」的ステレオタイプの二元論を脱して 真に国民の利益に資するための仕組みへと発展させるよう 切に見直しを願います。