2010年8月号
ウエルビーコラム 2010年8月号
「単純」という危うさ
だからコンサルタントは嫌われる
こんなアメリカンジョークがあります。
牧場で羊の面倒をみていた羊飼いのところに 高級車に乗った1人の男がやってきた。 そして 羊飼いに提案を持ちかけた。 「おたくの群れに羊が何頭いるか当てたら 1頭もらえるかな?」羊飼いは その交換条件を呑んだ。「キミの羊の数は126頭さ」 と男は言った。羊飼いは「正解だ。1頭持ってきな。でも あんたの職業を言い当てたら返してくれるかね?」男はOKした。羊飼いは 「あんたの職業は コンサルタントだろ?」 男は 顔が真っ青になり「どうしてわかったんだ?」 「だって 人が知っている事をわざわざ教えようとするし しかもそれでお金をとっていくからさ」
ことほど左様に コンサルタントという職業には 悪いイメージがつきまとっています。
私自身も おかげさまで このごろ ようやく少しは認知していただけるようになってきましたが「介護や福祉のマネジメントをコンサルティングする」など想像もできなかった11年前には うさんくさそうな目で見られることが日常茶飯事でした。
官僚や弁護士・ジャーナリストそして経営者からも 身分を明かしただけで すげない態度をとられた経験も 数えきれないほどです。
最近「不動産コンサルタント」や「金融コンサルタント」などと名乗りながら 実態を伴わない企業や個人が違法行為を行う例が目立つことや「○○コンサルタント」など怪しい肩書きが乱立しているのも事実です。
しかし「客観的に現状を観察して現象を認識し 問題点を指摘 原因を分析し 対策案を示して企業の発展を助ける」というコンサルティングの専門性は この業界の成長に不可欠だというのも真実です。
「決めつけ」や「レッテル貼り」は 単純化によって自己の主張を正当化する詭弁です。
「ねじれ国会」で混迷する政治でも 社会保障の審議会や検討会においても 理論を無視した「断定」が横行しています。
知見を伴わない「暴論」は 単純なゆえに 情報や専門知識を持たない人間からは「わかりやすい」「力強い」と支持されやすいという危険性が大です。
政治家や官僚・学者はじめ専門家と呼ばれる人間に必要なのは 門外漢の国民に対して 複雑な要素を丁寧に説明すること。立場の異なる反論には セオリーとエビデンスで対抗し 最終的には 受益者たる国民視点で着地点を定めることです。