2010年11月号

ウエルビーコラム 2010年11月号

1か月で被保険者の拡大議論に結論!?
「言いっ放し」審議会に社会保障の未来は託せない

10月28日の第35回社会保障審議会介護保険部会(部会長:山崎泰彦神奈川県立保健福祉大学教授)では「介護保険制度の見直しに向け
さらに議論が必要な論点について」というテーマで これまでの議論の論点を整理し 以下のような給付や負担の見直しを論点として審議が行われました。

【利用者負担について】
1)高所得者の利用者負担の引き上げ
2)補足給付を施設に入所する前の世帯の負担能力や保有する資産などを考慮して決定
3)多床室の入所者への室料負担

【軽度者に対する給付について】
4)軽度者の利用者負担の引き上げ
5)生活援助サービスなど軽度者に対する給付の縮小

【被保険者範囲について】
6)被保険者範囲の40歳未満への拡大
【公費負担の引き上げについて】
7)公費負担割合を引き上げる

①公費負担割合を5割から6割に引き上げ
②調整交付金の外枠化
③補足給の公費負担化
④地域支援事業の公費負担化
現政権が
消費税は上げない「ペイアズユーゴー原則」(歳出増または歳入減を伴う施策の新たな導入・拡充を行う際は
原則として 恒久的な歳出削減または恒久的な歳入確保措置により それに見合う安定的な財源を確保すること)を堅持する という方針を表明している以上 利用者・被保険者の負担増ないし給付縮小が避けらないことは 火を見るより明らかでした。

また「11月までに9回の部会を開き 部会としての意見を取りまとめる」という同部会のスケジュールが あらかじめ示されていたにもかかわらず これまで ほとんど内容のある議論が行われてはきませんでした。

唯一 10月7日の第34回会合において 結城康博委員(淑徳大学准教授)が「(部会に)介護現場の声を反映させるべき。財政論ありきで議論を推し進めるのは問題」と意見を述べたのに対し 土居丈朗委員(慶応大学教授)が「(部会での議論は)給付拡大の話が多く 財源の問題に時間が割かれていない。給付を拡充するなら どこから財源を確保するのかを前提に置きながら議論すべき」というやり取りがあっただけです。

私は 6月の本コラム「理想の実現に向け勇気を持って改革を」
「いずれの課題についても『介護保険の公費負担増』や『被保険者などの対象拡大の是非』といった財源問題は避けて通れません」と述べました。

事務局である厚生労働省老健局の「部会はガス抜きの場でいい」といわんばかりの姿勢や座長および委員の消極的な姿勢を 「勇気が欠けている」と批判するのは無責任なのでしょうか。

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