2011年10月号
ウエルビーコラム 2011年10月号
経験から「学び」を引き出す
10年を超えて成長を続けるためには
松尾睦神戸大学大学院経営学研究科教授によれば 人が経験から学ぶというのは
①「具体的経験」をした後
②その内容を「内省し(振り返り)」
③そこから「教訓」を引き出して
④その教訓を「新しい状況に適用する」
というプロセスをたどるといいます(「ビジネスパーソンが成長するには なぜ経験から学ぶ力が必要になるのか?」ダイヤモンドオンライン) 。
言い換えれば 経験をしっかり振り返り そこから学びを引き出しているか それとも「経験しっぱなし」にしてしまうかが成長(仕事を遂行する能力を獲得する)の分かれ目になるということです。
松尾教授が人材開発部門で働くビジネスパーソンに対して実施した調査によれば 「初心者→見習い→一人前→中堅→熟達者」という5つの階段(ドレイファスの人材成長モデル)にあてはめると 職場の中核となって働くメンバーである「中堅レベルの社員」は3割程度 外部でも名が知られる組織内のエースである「熟達者レベルの社員」は約1割だということです。
また リクルート・ワークス研究所の定期的調査から「強い成長実感」についてのデータ見ると 強い成長実感を持っている人の割合は 30代に入って急激に落ちていることがわかるそうです。
つまり「企業に入った初めの10年間は順調に成長するものの 仕事に慣れてきた30代以降は徐々に企業人の成長が鈍化する傾向にある」ということです。
「知識が固定化してしまうことがこの理由の一つ」だと松尾教授は考えています。
人は 経験を通して問題を発見し解決するための知識やスキルを習得しますが こうしたノウハウは一度出来上がってしまうと そこに新たな知識を肉づけしていくことはできても 不必要となった部分を捨てたり ノウハウを作り変えることが難しくなるからです。
10年を超えた介護業界においても同様なことがいえないでしょうか。
手に入れたと感じたノウハウであっても 手入れを怠らず改善や改良を続けなければ 固定化されてしまい 成長が止まってしまいます。
昔のやり方に固執することなく 経験から学ぶ力を蓄えた組織だけが 成長を約束されています。