2011年12月号
ウエルビーコラム 2011年12月号
たゆまぬイノベーションしか道はない
「消費税10%」だけで明るい未来は拓けない
年の瀬を迎え 報酬改定もいよいよ大詰め。 12月5日の社会保障審議会介護給付費分科会では審議報告がまとまる予定です。
介護保険部会では 11月30日に「社会保障・税一体改革における介護分野の制度見直しに関するこれまでの議論の整理」が取りまとめられました。
去年の今頃は この時期にまた介護保険部会が開催されるなどとは想像もしていませんでした。
昨年12月の本コラムを読み返すと「介護だけよくなっても日本に未来はない! 」というタイトルで「財源不足と増税を抜きにした議論の限界」「政治的なリーダーシップの欠如」を訴える内容でした。
それが「社会保障・税一体改革」という錦の御旗のもとに様変わりしました。
財源論や社会保障ビジョンに踏み込んだ議論を経て 政治が「消費税増税」という方向性を打ち出したのは一歩前進と評価していいと思います。
ただし「東日本大震災」を政治的に利用したきらいがなきにしもあらずという点に加え 国民に対して社会保障の現状の真の姿と改革後のビジョンを包み隠さず説明できているかという点においては疑問が残ります。
具体的にいえば「少子高齢が他の先進国より進んだ超高齢国家そして莫大な債務を抱えてしまった日本はすでに『高負担なら中福祉・中負担なら低福祉』の国しか次世代に残すことができなくなっている」(権丈善一慶應義塾大学商学部教授)という現実を知らしめていないのではないかということです。
この期に及んでも 政府与党の高官や厚生労働に関与している議員たちが「プラス改定」を叫び続けていることは奇異としか思えません。
まったなしのわが国の将来とりわけ地域包括ケアのビジョンがめざす2025年が本当に希望に満ちたものであるためには 厳しい現実を見据えたうえで 新しい仕組みを恐れずたゆまぬイノベーションに取り組んでいくことが欠かせないはずです。