2012年10月号
ウエルビーコラム 2012年10月号
追い風の「住まい系」サービスに落とし穴
「ニーズ」と「ドメイン」が分かっていますか!?
日本経済新聞は「老人ホーム成長軌道に 高齢化進み施設追いつかず 入居金元手に投資加速」(9月24日付夕刊)と「サービス付き高齢者住宅
近畿で増設・参入相次ぐ」(9月27日付電子版)と相次いで「住まい系サービス」の活況を伝えています。
「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)は登録件数で2千・戸数では7万を超え 他方有料老人ホームを運営する上場4社が保有する入居金残高の合計は2013年3月期には合計で579億円(前期比10%増)と過去最高になる見通しです。
しかし 現状に違和感を覚えるているのは私だけではないでしょう。
低迷する日本の経済下では数少ない「上げ潮」のビジネスです。 建設や不動産関連企業あるいは土地の有効活用を望むオーナーにとっては 補助金・
税制優遇・制度融資の要件緩和はじめ数々の政策的後押しは大きな魅力に違いありません。
その結果できあがった高齢者住宅には「なぜいま・この立地で・ この面積・ このサービスの住まいをつくったのだろうか」と首をかしげたくなるものも少なくありません。
透析を手掛ける医療機関が「サ高住」を建てたのはいいが 自らのクリニックから離れた土地に すべて台所・浴室を備えた25㎡の居室にデイサービスを併設したという例もあります。
あたりまえのことではありますが「餅は餅屋」です。
医療保険や介護保険から収入を得る事業と家賃収入を目的とする事業では ビジネスモデルが異なっています。
他方 入居者・顧客にとっては「地域包括ケア」の名のもとに 不本意ながら「施設」に入ることから解放され「住み慣れた地域で在宅生活」を謳歌できるという期待が幻想に終わる という最悪の事態も想定されます。
医療機関や介護事業者が「住まい」を軸にサービスを提供し 顧客や地域と “win-win” の関係を構築するためには地域の「ニーズ」(顔の見える顧客)と自らの「ドメイン」(戦う領域)を把握することが不可欠です。
※ 11月10日(土)「在宅事業者が取り組む『住まい』サービス-地域包括ケアが求める介護事業者の使命」フォーラムを開催します。在宅介護大手・株式会社やさしい手香取幹社長と人口9千人あまりの村に有料老人ホームはじめさまざまなサービスを展開する大石ひとみ社長という対照的な二人の経営者を講師に迎え 在宅介護・医療の専門家であるみなさまの羅針盤
となるべく議論を行ってまいります。