2013年3月号

ウエルビーコラム 2013年3月号

当たり前の社会が実現する
淘汰がないことが市民の不利益

年度末が近づくと講演の機会が多くなります。今年も2月だけで8回お話をするチャンスをいただきました。
ありがたいことには間違いないのですが 団体主催の講演会の場合 無料のためかあるいは「動員」のためかは定かではありませんが 興味をもっていない受講者をみかけることがあります。

そのような受講者でも 私の話すテーマに多少なりともかかわっているのではないかと推測されますから 最後まで面白くも参考にもならなければ たいへん不幸だと思うため ひとつでも「聴いてよかった」というお土産を持って帰ってもらおうと心がけています。
たとえ自分とは意見が異なっていても「こんな見方もあるのか」「講師の見解は間違っており自分の考え方の方が正しい」という「気づき」でもプラスになると思っています。

興味を示してこない受講者の多くは「自分には関係がない」という思い込みが持っている場合がほとんどです。
たとえば「在宅で支える」というテーマなら「自分の職場は施設だから」 とか「サ高住」というテーマなら「自分は特養の経営者だから」などといったようなことがあります。ほんとうに残念なことです。介護や福祉が「タコツボ」に陥っているといわれる所以です。

そんな近視眼的な受講者だけでなく 自分の立ち位置を社会や経済また歴史や哲学といった観点から俯瞰してみることが不得手な事業者も少なくありません。
最近の講演でも 来年度予算についての財務省のスタンスに注目している経営者にはほとんどお目にかかりませんでした。

財政制度等審議会の「平成25年度予算編成に向けた考え方」には 介護保険について以下のような記述がみられます。
「利用者負担割合の見直し・ 保険給付範囲の見直しはもちろんのこと 給付と負担のバランスを図るための強力な制度改革が急務」
「制度創設以来 利用者負担割合は1割のまま据え置かれており 早急にその引上げを実現する必要がある」
「要支援者に対するサービス提供の実態を見ると 訪問介護については生活援助サービスが大半を 占め 中でも掃除がその半分以上を占めている。 …要支援者に対するこうしたサービスを公的保険の対象とすることには疑問がある」
昨年度までは これほど直截な記述はありませんでした。
この内容が適切か不適切かは問いませんが  事業者にとって看過できない課題をはらんでいるのは間違いありません。

「介護」という話題にしか関心がない。「社会保障」にしか興味を示さない。
では生き残りもかなわない時代にすでに突入しています。
翻って言えば「淘汰されるべきものは淘汰され 市民・国民・顧客に必要なものだけが支持される」という 当たり前の社会が実現されるということかもしれません。

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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